リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
バルサで純粋培養されたサンペール。
神戸の新戦力はグアルディオラ2世。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byUniphoto Press
posted2019/03/08 17:30
ケガに泣かされ続けたとはいえ、バルサはサンペールに大きな期待を寄せていた。そんな選手をJで見られるのは幸福なことだろう。
定位置を奪えず、ケガの連続。
前途洋々だと思われた。クラブからもサポーターからも大いに期待されていた。ところが、ここから先は茨の道となる。
目標のブスケッツは超えられない壁となり、デビューした2014-15シーズンの残りは、国王杯3試合、翌シーズンは全公式戦を合わせて7試合で起用されただけだった。
2016-17シーズンは、バルサに似たパスサッカーを志向するヘメス監督に乞われてグラナダへ期限付きで移籍したものの、開幕から約1カ月で監督が代わり、プレースタイルも180度変わってしまったため活躍も成長もなかった。
昨シーズンはラスパルマスへ期限付きで移籍した。ところが、今度は最初にふくらはぎの肉離れ、次に腓骨の骨折と足首の靱帯損傷を負い、出場はリーガと国王杯を合わせても5試合342分のみにとどまった。
そして今季。出番に恵まれないことを承知の上でバルサに残ったところ、開幕前に膝と足首を痛めてしまった。さらに、約11カ月ぶりの公式戦となった昨年10月末の国王杯で、またもやふくらはぎの肉離れに見舞われた。
ひどい不運なのか、何かの呪いなのか。まさにどん底である。
「僕の望みはサッカーを楽しむ」
沈み込んだサンペールは、失って久しい高揚感と自信を取り戻すために決断を下した。それが、バルサとの契約解消とヴィッセル神戸への加入だった。
「僕の望みはピッチに戻り、またサッカーを楽しむこと。ヴィッセルは、そのチャンスを与えてくれた」
バルサの練習場で退団の記者会見を開いたサンペールは、クラブ関係者が見守るなか、こみ上げるものを抑えながら語っていた。
将来を期待された逸材が、キャリアのピークを迎えてもいない24歳で欧州サッカー界を離れるのは不可解だ。サンペール自身、20代半ばで日本へ行くことになるとは思ってもいなかったことを認めている。
しかし、「野心的ながらしっかりしたプロジェクトをオーナー(三木谷氏)から聞き、バルサのようなサッカーでアジアの強豪になろうとしているヴィッセルのキープレーヤーになってもらいたいと言われ」、自分の価値を再確認できる可能性を感じたという。