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初登板にしては「すごくいい」。
菊池雄星がずっと笑顔だった理由。
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byGetty Images
posted2019/03/02 09:00
このまま順調に行けば東京ドームで行なわれる開幕2戦目の先発の可能性もあるが、果たして。
初戦で95マイルまで出た。
調子の悪い時にどうするか――は、メジャーで年間を通して先発ローテーションを守るうえで、大事なキーワードのひとつでもある。
その意味でも、2010年ナ・リーグMVPのジョーイ・ボットをカーブで空振り三振に打ち取るなど、投球の組み立て、バランスなど、初戦としては申し分ない内容だった。
「毎年、スピードが出なかったらどうしようという不安があるんですけど、まず初戦で95マイルまで出たというのはホッとする材料かなと思います」
イニング間のキャッチボール禁止。
その一方で、新たな課題も見つかった。
試合開始45分前に、ジャンパー姿でグラウンドに足を踏み入れた菊池は、アップ、遠投、ブルペンでの投球練習を終えた後、時間を持て余した。プレーボールを待つ間、ダッグアウト前で捕手とキャッチボールを繰り返し、温まった体を維持することに努めた。
マウンドへ向かうタイミングにも戸惑った。日本と違い、イニング間にダッグアウト前でのキャッチボールが禁止されていることもあり、ベンチ内での対処も必要になる。
「やはり変えていかないといけないところは必ず出て来ると思います」
長い間、メジャーを目指してきた菊池にすれば、戸惑いがあることも、すべてがうまくいくわけではないことも、百も承知だった。
「より実戦が多くなってきて、いろいろなことが起こると思います。最初にしては、すごくいいスタートが切れたのが一番ですね」
収穫も課題も、第一歩を踏み出した喜びがあるからこそ――。
初登板を終えた菊池は、最後まで笑顔を絶やすことがなかった。