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<マススタートの初代女王>高木菜那「研ぎすまされた勝負勘」 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byTsutomu Kishimoto/JMPA

posted2018/03/09 06:00

<マススタートの初代女王>高木菜那「研ぎすまされた勝負勘」<Number Web> photograph by Tsutomu Kishimoto/JMPA
一瞬の隙を突いてインを差し、一気にラストスパート――。
身長155cmの小さなスケーターが見せた鮮やかなレースに、日本中が沸いた。今大会2個目の金メダル獲得という快挙は、冷静な駆け引きと鋭い勝負勘がたぐり寄せたものだった。

 あっぱれなレースだった。最終16周目の最終コーナーで抜け出して先頭に立った。鮮やかなラストスパートでつかんだ金メダル。平昌五輪から採用されたスピードスケート新種目の女子マススタートで、高木菜那が初代女王に輝いた。

 歓喜に沸いた女子チームパシュートの金メダルから3日。自身にとって今大会2つ目の金メダルは、個人種目での栄冠となった。冬季五輪で2つの金メダルを獲得した日本女子選手は過去にいない。

「獲りたいとは思っていましたが、まさか獲れるとは。信じられない気分です」


 レーステクニックが冴えた。まずは1周400mのリンク16周を12人で滑り、上位8人が決勝に進む準決勝。ここでは4周目に5ポイントを獲得し、残りの12周を省エネで乗り切った。出場した24選手中、最も低い身長155cmの小柄な身体を逆手に取り、チームパシュートで培った、他の選手を風よけに使う巧みな位置取りで、体力を温存しながら決勝に進んだ。

 準決勝のもう一組では、チームパシュートの仲間である佐藤綾乃が、他選手の転倒に巻き込まれて転ぶというアクシデントがあった。佐藤は決勝に駒を進められず、涙をのんだ。

 1カ国最大2人が出られるマススタートは、同じ国の選手が連携しながら滑る、戦略性のある競技だ。2人いればサポート役の「アタッカー」が前を追ったりレースをつくったりして、最後に「スプリンター」が勝負をするという戦略が可能になる。国際大会のマススタートで何度も表彰台を経験してきた高木菜那も、つねづね「個人種目ではあるが、チーム競技だと思っている」と語っており、決勝を1人で迎えることに不安があっても不思議はなかった。

こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
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