ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER

栗山監督が考える優勝の条件と、
日本ハム苦節のドラ1右腕の再起。 

text by

高山通史

高山通史Michifumi Takayama

PROFILE

photograph byKyodo News

posted2019/02/19 11:30

栗山監督が考える優勝の条件と、日本ハム苦節のドラ1右腕の再起。<Number Web> photograph by Kyodo News

'10年に初登板初先発初勝利を挙げて、ウイニングボールにキスする日本ハム・中村勝。'17年に右肘手術を受け、現在は復帰途上にいる。

トミー・ジョン手術を受けて。

 2017年7月、右ひじ内側側副靭帯再建術を受けた。通称トミー・ジョン手術と呼ばれる、投手生命を左右し、また再起を図るための処置である。

 北海道日本ハムファイターズではOBで現シカゴ・カブスのダルビッシュ有投手も経験者で、エンゼルスの大谷翔平投手も昨年、同じ手術を受けている。

 手術直後から、なかなか先を見通せない長いリハビリ生活へ突入する。投手であるにもかかわらず、投げることができない。過酷な日々を過ごすのである。

 広報へ転職1年目、中村投手と術後に再会した時には彼は苦悩していた。

「これ、いつ投げられるようになるんですかね」

 鎌ケ谷で時折、会ってもウエートトレーニングかランニングをしている場面を、見るだけだった。時が経ち、キャッチボールをするようになっても少年野球の球児のような短い距離。術前は、たまに軽口で会話もしていたが、それもこちらが遠慮してしまうような状況だった。

上沢の復活の軌跡を励みに。

 ただ本人が気丈だったことは、鮮明に覚えている。前職時代から顔見知りだったこともあり都度、現状を報告してくれた。その直前に、同じように故障、手術で苦しんでいた上沢直之投手が復活を遂げていく軌跡を、励みにもしていた。

 後輩だが、同世代で同じ本格派右腕。今シーズンの開幕投手にも指名された盟友のカムバック劇を横目に、淡々と中村投手自身も再び、マウンドに立つ時を待っていた。周囲が想像するよりも前向きに1日、1日を過ごしていたという。

「少しずつできることが増えていったり、投げられるようになってきたり……。それは、それで楽しかったです。充実はしていました。野球がまたできる喜び、みたいな感じはありましたね」

 昨シーズンの終盤には二軍で実戦復帰を果たし、少しずつ階段は上っていた。完全復調の途上でも、今回は一軍メンバーへと選抜された。そして、ライバルと勝負をするマウンドへと立った。1イニング目の乱調の要因は、ただ1つだった。苦笑いを浮かべながら、その時の心境を明かした。

「やっぱり、さすがに力みましたね。やっぱり、なんていうんですかね。あんまり、うまくは言えないですけれど、力は入りました」

【次ページ】 先輩のダルビッシュとも対面。

BACK 1 2 3 NEXT
#北海道日本ハムファイターズ
#中村勝
#栗山英樹

プロ野球の前後の記事

ページトップ