スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
右足切断危機から帰還のカソルラは、
崖っぷちビジャレアルの救世主か。
posted2019/02/07 08:00
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
Uniphoto press
年明け早々の1月3日、大好きなベテラン選手がやってくれた。
レアル・マドリー相手に2ゴール(しかも1ゴールはプロキャリア2度目となるヘディングで!)を挙げた、サンティ・カソルラである。
約2年のブランクと10度の手術を乗り越え、昨夏34歳にして実戦復帰を果たしたサンティは、試合後のフラッシュインタビューでこう言った。
「これまで自分に起こったあらゆる出来事の後で、今日は特別な試合になった」
サンティの悪夢は2013年9月10日の親善試合、スペイン対チリ戦からはじまった。
この試合で相手選手に右足のかかとを蹴られて以降、彼は今現在まで同箇所の痛みを抱え続けることになる。
当初は検査しても外傷が見られず、原因の分からぬ痛みを抱えながらプレーする日々が続いた。2015年11月には左膝の靭帯を断裂する大怪我にも見舞われたが、それが完治した後もかかとの痛みは消えることがなかった。
痛みは耐えきれないレベルに。
そしてとうとう、痛みは耐えきれないレベルに至る。2016年10月19日のことだ。
「あれは忘れもしないCLのルドゴレツ戦だ。痛みに耐えきれず、ピッチ上で涙を流し、交代を申し出たんだ」
そこからは手術の連続だった。肝心の痛みは消えず、患部は化膿して傷口が塞がらない。何度メスを入れても復帰のめどは立たず、医師からは「息子と歩けるようになるだけで満足すべきだ」とまで言われた。
しかし、サンティは諦めなかった。
ようやく光明を見出したのはイングランドの医師たちに見切りをつけ、バスク自治州ビトリアのミケル・サンチェス医師の元を訪れてからだ。