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14歳・木原美悠の潜在能力がすごい。
卓球特有の「促進ルール」にも即応。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2019/01/28 10:30
張本智和と同じくJOCエリートアカデミーに所属する木原。木下アビエル神奈川の一員としてTリーグにも参戦している。
佐藤は日本屈指のカット主戦型。
主要大会で、促進ルールが適用された試合も過去にいくつか見受けられる。例えば2009年の全日本卓球選手権の女子シングルス決勝。平野早矢香と王輝の試合で適用され、カット主戦型ではない平野が粘り強く戦い、勝利している。
2014年、東京で開催された世界選手権団体戦準々決勝では、石垣優香とリー・ジエ戦で適用されている。
そして今回の木原と佐藤の試合だ。屈指のカット主戦型である佐藤は、狙い通り、長いラリーの中で得点を重ね、3-1とリードを奪った。
だが後がなくなった第5ゲーム、木原はそれまで見せていた以上の粘り強さを見せる。軽打や「ツッツキ」(相手の下回転のかかったボールを打ち返す方法の1つ)などで応戦。すると時間が長引き、促進ルール適用となったのだ。
ルールが隠れた能力を引き出した。
「促進ルールから流れが変わった」と佐藤は振り返る。
言葉通り、佐藤がサービスを持った際に攻撃に出ざるを得ず、乱れが出始める。一方、木原はレシーブ時にはしっかり粘って返球し、サービス時には攻めに出る。
木原は、これまで促進ルールが適用された試合をほとんど経験したことがなかったという。だが、コーチからの短い指示で状況を理解し、ルールのもとでのプレーを実践したのである。
「いちばん考えていたのは、我慢ということです」
木原は試合後にこうコメントしているが、単なる我慢にとどまらず冷静なプレーと技術も光った、つまり、木原のポテンシャルの一面を示す機会となった試合だった。
カット主戦型との対戦で促進ルールという卓球特有のルールが適用されたからこそ見えた木原の可能性でもあった。