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14歳・木原美悠の潜在能力がすごい。
卓球特有の「促進ルール」にも即応。
posted2019/01/28 10:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
1月14日から20日まで行われた卓球の全日本選手権。この大会で注目された選手の1人に、女子シングルスで決勝に進出した木原美悠が挙げられる。
14歳の木原は前々大会王者の平野美宇を5回戦で破るなど、実力者に次々と勝利し、史上最年少で決勝に進出。伊藤美誠に敗れたものの、堂々、準優勝で大会を終えた。
その活躍ぶりは見事の一言に尽きるが、ある意味、卓球ならではとも言える試合も経験することになった。それは準々決勝、佐藤瞳との一戦だ。
この試合で、「促進ルール」が適用された。促進ルールは、卓球界の人や愛好者には常識でも、決して広く知られているわけではない。卓球特有のルールが新鮮に感じた人も少なくなかったようだ。
そもそもこのルールは一体何なのか。概要を説明すると、ゲームがスタートして10分経ってもそのゲームが終わらず、そして両者の得点の合計が18点に満たない場合に採用される制度だ。
この際にレシーバーが13回返球したらレシーバーの得点となる。裏返せば、サーバーが得点するには、それまでに決めなければならないということを意味している。
つまりラリーの回数を制限し、ゲームを長引かせないためのルールだ。採用された背景には、試合時間があまりにも長引くケースがあったことを示している。
カットマン同士の戦いは長引く。
分かりやすい例で言えば、カット主戦型同士が対戦する場合だ。
カット主戦型とは、相手のボールに回転をかけた返球(いわゆる“カット”)で粘り強く打ち合いながら得点機を待つタイプの選手だ。守備的なスタイルと言ってもいいかもしれない。
だからカット主戦型同士で戦えば、ラリーは延々と続く。1点が決まるまでに三桁を超えるラリーが続くこともある。必然、試合時間は長くなる。促進ルールの適用が見られるのもカット主戦型同士であることが多い。
そしてこのルールは卓球ならではと言えるだろう。他のネットのある球技、例えばテニスなどではこうした状況は考えにくい。ラリーが続くとしても、ある程度の限度があるからだ。促進ルールがあるのは、ボールに回転を与えることで相手が打ち返しにくくなり、ミスをする、あるいはチャンスボールを与えてしまうことがある卓球だからこそのルールだと言える。