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丸佳浩、坂本勇人を活かす1番打者。
巨人キャンプの鍵は吉川尚輝に。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2019/01/28 17:00
2016年のドラフト1位で巨人に入団した吉川尚輝。昨季は怪我によりブレイクならずだったが、今季は内外から多くの期待の声が上がっている。
打撃センスは良いはずだが……。
吉川の問題は、やはりバッティングである。
昨年の打率は2割5分3厘で出塁率3割4厘。悪くもないが丸、坂本の前を打つ1番打者としては物足りないのは否めない。二塁争いの最大のライバルとなる田中俊太内野手は打率こそ2割4分1厘だが、出塁率は3割1分1厘と数字面では上回っている。
「当てるのはうまいし、決してセンスがないわけではない。むしろいい打撃センスをしていると思うよ」
昨年の吉川のバッティングを見ていて投手という立場からこう語っていたのは、堀内恒夫元巨人監督だった。
「引っ張って強いライナーが打てるのが強みだけど、逆方向への打球が弱くなってしまっている。そしてあとは選球眼だね。ボールの見極めができていないから、投手にとっては打席に迎えても、まだそれほどいやらしいという感じはないと思うよ」
まず、シーズンを乗り切る体力を。
一軍に定着した昨年は月別で見ていくと3、4月は打率2割5分で、その後は5月が2割2分6厘、6月が1割3分3厘と急降下してスタメンを外れることも多くなる。しかし7月には3割8分6厘と打ちまくった。要は試合に出続けて体力的に落ちるとともに数字が下がったが、先発を外れて体調が戻ると再びヒットが出始めたのが分かる。
同時に注目する数字が三振率だ。
4月には23%だったのが、5月は19.8%、6月が13.8%とどんどん数字が下がって、7月には9%になっている。
要は一軍の投手に慣れていくに従ってボールへのコンタクト率は上がっているということだ。一軍のシーズンを乗り切る体力をつけて場数を踏めば、打撃の向上はかなり見込めるはずなのだ。
ただ1つだけ不満なのは四球率で、開幕当初の6.2%から7.3%と少し上るが、その後は1.5%、3.8%と低い数字で推移し最終的には5.4%となっている。結果的にはこの四球率の低さが出塁率を上げきれない大きな要因になっているというわけだ。