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シャケトラと角居調教師、石橋脩。
それぞれ逆境を乗り越えた復活劇。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2019/01/25 07:00
アメリカジョッキークラブCで優勝したシャケトラ。角居勝彦調教師は表彰台に上がることを拒んだ。
フィエールマンが背後に。
中山芝2200mのこのレースはステイインシアトルの逃げで幕を開けた。2番手に続いたのが2番人気のジェネラーレウーノ。中山では4戦3勝3着1回。唯一敗れたのが皐月賞(GI)だが、それでも3着に善戦したコース巧者なのだから上位人気に支持されるのも頷ける。
石橋騎手操るシャケトラはその少し後ろにいた。そして、そのシャケトラをターゲットにするように直後に1番人気のフィエールマンが続いた。
フィエールマンはデビューからここまで4戦3勝2着1回。僅か3戦のキャリアしかなかった前走で、菊花賞(GI)を優勝し、手綱をとったクリストフ・ルメール騎手に「大事なのは経験より能力」と言わしめた素質の持ち主。ディープインパクト産駒のこのクラシックホースが、単勝1.7倍の圧倒的1番人気に推されていた。
それぞれにとって久々の勝利。
レースが動いたのは最終コーナーだった。逃げるステイインシアトルをかわしてジェネラーレウーノが先頭に立とうとするが、そのすぐ外に馬体を並べるようにシャケトラが迫っていた。
後ろに控える1番人気馬の動きを気にすることなく、前を行くもう1頭の人気馬を自ら捉えに行く競馬ぶり。「休み明けで息がもたないかも……」と考えていては出来ない手綱捌きは、正に“馬を信じた”“馬の仕上がりを信じた”“馬を仕上げたスタッフを信じた”そして、指揮官から伝えられた「馬は出来ています」という"言葉を信じた"騎乗ぶりだった。
「息切れしませんでしたね……」
角居調教師がレース後にそう語るように、シャケトラは踏ん張った。ジェネラーレウーノを早々にかわし先頭に立つと、圧倒的1番人気馬フィエールマンの追走にも、最後まで抜かれることなくしのぎ切った。
シャケトラにとって'17年の日経賞以来1年10カ月ぶりとなる勝利は、角居調教師にとっても石橋騎手にとっても復帰後、初めてとなる重賞制覇となった。