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菊池雄星を変えた炭谷銀仁朗の言葉。
「奪三振王と最多勝、どっち?」
posted2019/01/10 08:00
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
Kyodo News
「メジャーリーグを目指そうと思った15歳のときから、12年間ずっと夢に見てきたことです。毎年毎年、その思いは膨らむばかりでした。今はまずスタートラインに立った。でもゴールではなく、これからが本番だと思っています」
シアトル・マリナーズへの入団を発表した菊池雄星が1月7日、挨拶のために埼玉県所沢市の球団事務所を訪れた。
岩手県から埼玉へやってきて9年。願い続けた夢の第一歩を踏み出した。
菊池は2010年、花巻東高校から鳴り物入りで西武に入団した。ドラフト1位で菊池を指名したライオンズは、6球団競合の末に交渉権を獲得。入団が決まった直後から注目を集め、連日、所沢市にある二軍施設には多くの報道陣が集まった。菊池の一挙手一投足にメディアは注目した。
「雄星は、どっちになりたい?」
しかし、なかなか結果がついてこなかった。1年目は故障のため、一度も一軍に上がることなくシーズンを終える。
2017年、最多勝を獲得した直後のインタビューで、菊池は当時をこう振り返っていた。
「2年目から一軍で投げるようになったんですけど、なかなか勝てなくて。特に3年目から5年目くらいのときは、ただただボールを投げているという感じだったんです。ただ、ガムシャラに投げていて、打たれたら『ああ、打たれてしまったな』で終わっていた。自分のピッチングについて、あまり考えていなかったと思います」
高校生とは次元が違うプロのバッターに、苦戦する日々が続いた。
そんな菊池を叱咤し、変えたのは入団2年めからバッテリーを組んできたキャッチャーの炭谷銀仁朗だった。
炭谷は菊池に言った。
「もっと意図をもって投げないとアカンやろ」
「10勝10敗のピッチャーになるの? それとも15勝5敗で、勝ち星を貯金できるピッチャーになりたいの?」
「雄星は、どっちになりたい?」
幾度も菊池に問いかけた。