ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
天龍源一郎が最も悩んだときの答え。
50人に嫌われたら、50人に好かれる。
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byNaoya Sanuki
posted2019/01/02 17:00
引退から3年を経て、天龍源一郎が記した人生相談は趣深いものだった。
負けないあなたでいてほしい。
そして'15年に65歳で現役を引退。大相撲、プロレスと足掛け50年の格闘人生をあらためて振り返って、どのような思いがあるだろうか。
「楽しかったよ。いろんな人と巡り会えたし、いろんな人生の起伏があったというのは、意外と振り返ったときに楽しい思い出になってるよ。だから、今いろんな悩みを抱えてる人に俺がひとつ言っておきたいのは、平穏無事な人生がいいと思ってるかもしれないけど、波乱万丈な人生も刺激があっていいもんだよってこと。
いろいろ困難なこともあると思うけど、それを試練と思わず、ある種、自分に与えられたレクレーションだと思って、乗り越えていってほしいね。これは俺の経験から言えることだけど、人間ってしたたかなもので、自分を信じていれば、なんとか乗り越えられるものなんだよ。
ただ、いまの若い人たちは、ちょっとかわいそうなところもある。俺たちの若い頃は、どんなに苦しくても『明日は絶対にくる』と思える時代背景があったからね。ところが今は、世の中の仕組みが悪いのか、明日が見えない人たちが多いんじゃないかな。だからこそ、自分をしっかり持って、負けないあなたでいてほしいというのが正直なところだよね。一歩踏み出す勇気があれば、何かしら視界が開けるものだよって」
現役時代、常にファンと真正面から向き合い、「LIVE FOR TODAY(今日を生きる)」を旗印に闘い続けてきた天龍源一郎。引退したいまも、その生き様はプロレスラーのままだった。