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福留を引きずり降ろす若虎はいるか?
金本知憲前監督が描いた理想の行方。

posted2018/12/28 11:30

 
福留を引きずり降ろす若虎はいるか?金本知憲前監督が描いた理想の行方。<Number Web> photograph by Kyodo News

金本監督が去り、福留孝介が残る。阪神の中心が甲子園育ちの生え抜き選手になる日は来るのだろうか。

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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Kyodo News

 毎年恒例、Number Web版“プロ野球・ゆく年くる年”企画は、全12球団の反省と期待を綴る短期集中連載シリーズです。今年もそれぞれの愛すべきチームについて、しっかりと2018年、そして2019年への思いを発表していきたいと思います。
 第2回は、我らがアニキ・金本知憲監督が2018年シーズン限りで辞任となった阪神タイガースです!

 2018年、タイガースの最終戦は10月13日だった。すでに最下位が確定し、金本知憲監督の電撃辞任も決まっていた。すべてが終わった後、クライマックスシリーズ開幕の裏でひっそりと催された。

 試合前、キャプテンの福留孝介が慌ただしそうにしていた。この日はナゴヤドームで相手球団のレジェンド、岩瀬仁紀、荒木雅博の引退セレモニーが予定されていたからだ。ともにかつてのチームメイトであり、岩瀬は同期入団、そして荒木は同じ1977年生まれの盟友だった。セレモニーの打ち合わせや、試合の準備に追われながら福留はふと、こう漏らした。

「なんであいつが先に辞めるんだろうな。俺より動けるのに……」

 荒木の引退について思うことがあるようだった。同じ41歳、ずっと同じ道を並走してきた2人が、この日を境にグラウンドの内と外に別れる。41歳の両者を分けたものとは何だろうか。

「若虎」が活躍した試合ではあったが。

 個人やチームの事情はそれぞれあるのだが、大原則としてプロ選手が辞める時、それは自分の“椅子”がなくなった時だ。

 福留はその椅子を守り抜いたということだが、裏を返せば、タイガースには40を超えたベテランからそれを奪えなかった選手が大勢いたということだ。

 ゲームは「若虎」と呼ばれる選手たちが主役になった。9回に陽川尚将、大山悠輔が同点のきっかけをつくり、延長11回には中谷将大が決勝タイムリーを放った。3-2の逆転勝利。ただ、すべては終わっていた。ペナントレースの決着はついていたし、福留もスタメンでは出場していなかった。

 試合後、去りゆく金本監督はこう話した。

「中谷が決めたり、陽川、大山あたりですよね。この3年間、目をかけて、朝練に付き合ったりして、そういう選手たちが来年以降、芽が出て花が咲いてくれないと僕まで悲しくなりますよね。本当に来年以降、綺麗なすごい花を咲かせて欲しいですよね」

【次ページ】 チームの幹であり続けた“外様”たち。

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