濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
弱小団体ガンプロ、後楽園再進出!
立役者となった“場末のMr.プロレス”。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byDDT Pro-Wrestling
posted2018/12/21 10:00
勝者・藤田ミノルはガンプロに対する厳しい言葉を投げかけた。惨敗した大家健はこの思いにどう応えるのか……。
藤田から大家健への三行半。
どんなに負けてもへこたれないのが大家の売りだったが、勝村周一朗には「同じこと何回繰り返すんだ」と批判された。今成も「大家健だけに任せておけない」とひとり立ちしている。新加入した石井慧介と岩崎孝樹には「弱くてダメな俺たちだけど……」というガンプロの基本マインドを一掃したいという思いもある。いつまでも弱くていいわけがない、というのだ。
誰もがガンプロの状況をどうにかしようと思っていた。後楽園再進出もその一環だった。もしかすると藤田も思いは一緒で、その流れに唯一、乗り遅れたのが大家だったのではないか。
ノーロープ有刺鉄線デスマッチは、藤田の完勝だった。
大家が反撃する場面もあったのだが、存在感が違いすぎた。デスマッチでは“やられっぷり”、つまりどれだけ痛い思いをしたかも重要だ。その点でも藤田が大家を上回った。
圧巻は自分の体に有刺鉄線を巻きつけてのラダー(ハシゴ)上からのボディプレス。そこから大家の得意技である「炎のスピア」を決め、最後は自身の必殺技「SAYONARA」の変形バージョンで3カウントを奪った。
対戦相手の名前とともに「サヨナラ!」と叫んで決めるツームストーン・パイルドライバーだ。
文字通り、大家健への三行半だった。
「A級戦犯の俺を殺しに来てくれ!」
この日の観衆は769人。前回の1091人(超満員)から大きく減らしている。
「ガンバレ☆プロレス、大家健、そしてこの俺の2年間がこの程度だったってことだ」
試合後の藤田は言った。
「頑張ったかもしれねえけど、頑張り切れてねえからこの結果なんだろ」
舌鋒の矛先を自分にも向ける。フリーとしての自分の集客力も棚上げにはしない。そこに藤田らしい説得力があった。
大家はここでも言葉が出なかった。リングに上がってきたのはセミファイナルで勝利した今成だ。
「俺は草なぎ剛さんにフォール負けしたA級戦犯だ! 俺はA級戦犯の十字架を背負って、この1年ガンプロのリングで息してたんだよ! 藤田ミノル、俺とシングルマッチやってくれ! A級戦犯の俺を殺しに来てくれ!」