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瀬戸大也、もう1人の自分との和解。
「全部2番で、何やってんの?」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byAFLO
posted2018/12/10 07:30
瀬戸大也、表彰台の一番上は譲れない。まずは12月11日に開幕する世界短水路選手権だ。
家族よりも、自分のためだと再確認。
トライすればエラーが出る。
パンパシの結果を受けて練習では後半戦、平泳ぎの泳法などにメスを入れたという。そして8月のアジア大会(インドネシア・ジャカルタ)では同種目で萩野を抑えて、金メダルに輝いた。前半戦から1度もリードを許すことなく“1秒51差”をつけての快勝だった。爆発力は最後の最後まで持続した。男子200mバタフライとの2冠を達成。自分の取り組みが、正しい方向にあることを証明した。11日に中国・杭州で開幕する世界短水路選手権でも金メダルにこだわっていくという。
もう1人の自分と向き合い続けたことで、もはや迷いはなくなった。
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瀬戸は昨年5月に飛び込み選手の優佳さんと結婚し、今年6月に第1子となる長女が誕生した。妻から栄養面でのサポートを受け、長女の誕生でさらにモチベーションも上がった。ただ「家族のため」とは言わない。金メダルはあくまで「自分との約束」だからだ。
彼は言う。
「家族のために金メダルを獲りたいですかってよく聞かれます。もちろんそれもありますけど、結局は自分が欲しいから水泳をやっている。“家族のため”と答えると、周りの雰囲気に流されて言っているように僕自身が受け止めてしまう。だから、もう1度はっきりさせたんです。“自分のため”なんだ、と」
「その日一番速いヤツが勝つだけ」
陽気な瀬戸大也と、真面目な瀬戸大也。
プレッシャーを感じることなく、大舞台になればなるほど燃えるのは「陽気」が後押しする。
「僕的にプレッシャーという言葉はないですね。応援してもらっている、期待してもらっていると思うと、逆にワクワクします。でも興奮してブルッと緊張することはあります。パンパシはお客さんが凄くて、“これ東京五輪になったらもの凄い雰囲気なんだろうな”と。ちょっと張り切りすぎて突っ込みすぎましたけど(笑)。だからプレッシャーはどんな大会においてもない。試合は全力でやるだけ。その日一番速いヤツが勝つだけなんで」
プレッシャーを寄せつけない陽気と、自分を常に客観視する真面目と。
どちらもあってこその瀬戸大也。
どちらもがにらみ合って、金メダルを呼び込む爆発力が醸成される。
世界短水路、400m個人メドレーでは4連覇が懸かる。
迷いなき瀬戸大也が、爆発する――。