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瀬戸大也、もう1人の自分との和解。
「全部2番で、何やってんの?」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byAFLO
posted2018/12/10 07:30
瀬戸大也、表彰台の一番上は譲れない。まずは12月11日に開幕する世界短水路選手権だ。
「水泳を始めたころからの夢」
2番を悔しがった。とことん悔しがった。
自問自答する時間が増えていくなかで、「中途半端になるぐらいだったらやめちゃったほうがいいんじゃないか?」と問い掛けてくるもう1人の自分もいた。
どうして金メダルが欲しいのか。
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理由は単純明快。「水泳を始めたころからの夢」だったから。五輪でメダルを獲ることが夢ではない。表彰台の一番高いところに立つその1点が、夢なのである。
彼は自分の弱さを知っている。言わば、面倒くさがり。
「楽なほうに流れがち」
「練習中にこんなもんでいいかなと思ったりする」
だからこそ、ここぞのところで意外にマジメな自分を呼び込む。
こんなもんでいいかなと思った時点で「ここをしっかりやり切ろう」にした。楽なほうに目を向けそうになった時点で、厳しいほうに目を向けるようにした。
練習前にストレッチを入念にこなし、ウォーミングアップから突き詰める。練習後のクールダウンもしっかりとやる。足腰の強化が苦手で「どうやったら前向きにやれるかと考えて」トライアスロンにも挑戦してみた。ランで両足をけいれんするアクシデントに見舞われながらも完走した。
バタフライと背泳ぎでリードを奪う。
面倒くさがりの自分を、真面目な自分が背中を押す。
梅原孝之コーチのもとで、爆発力を生むトレーニングにも力が入る。前半のバタフライと背泳ぎで、いかにアドバンテージが取れるかどうか。東京五輪で金メダルを獲るために、とことんこだわることにした。
8月に東京・辰巳で開催されたパンパシ水泳、400m個人メドレーではチェイス・カリシュ(米国)、ライバル萩野公介との対決で、バタフライ、背泳ぎで先行逃げ切りを図ろうとしたものの、平泳ぎ、自由形の後半戦で爆発力を持続できずに3位で終わった。だが、掲げたテーマを実践できたという手応えのほうが強かった。