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瀬戸大也、もう1人の自分との和解。
「全部2番で、何やってんの?」
posted2018/12/10 07:30
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
AFLO
瀬戸大也には、心強い味方がいる。
家族も、コーチも、仲間も、応援してくれる人々も、ライバルも。そしてもう1人、自分をずっと見続けている、頼もしい存在がいる。
もう1人の自分。
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「客観的で、それでいて意外にマジメな自分。マイナスになりそうなところで、後ろから助言してくれるような感じなんです。違う自分がいることによって、もっともっと強くなれるような気がしています」
その後ろから助言する声が強く聞こえた出来事があった。
今年4月、東京・辰巳国際水泳場で行われた競泳日本選手権。アジア大会の代表選考会を兼ねたレースで、200m個人メドレー、400m個人メドレー、200mバタフライいずれも2位に終わった。
2位で代表の座に滑り込んで満足している自分がいた。そこに気づくと、満足していない“もう1人”が声を挙げたのだった。
「全部2番で、何やってんの? それで世界に出て戦えるの? 本当に満足しちゃってんの?」
そうだよな、これじゃ、いけないよな。
瀬戸はその声を聞き入れ、心のなかで気持ちを一致させた。
いつのまにかメダルで満足。
「優勝もいけるコンディションだったのに、何か素で満足しちゃっていて。2年前にリオ五輪で銅メダルを取って僕のことを知ってくれる人も増えて、声を掛けられたりすることも多くなりました。毎年、コンスタントにある程度の結果も出ていて、東京五輪が始まってもいないのに、そこそこ満足している自分がいて……。
以前のように、挑戦していく気持ちが薄れているんじゃないかって、リオが終わって悔しくて“4年後は金”と言ったのにいつのまにかリオのメダルで満足しちゃっているんじゃないかって思ったんです。もう1段も2段も上に行かないと、東京で金は獲れない。選考会の2番を悔しがれよ。自分が自分にそう言っていました」