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イカルディなどスター候補は多い。
アルゼンチン代表監督は大丈夫か? 

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藤坂ガルシア千鶴

藤坂ガルシア千鶴Chizuru de Garcia

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photograph byUNIPHOTO PRESS

posted2018/12/05 10:30

イカルディなどスター候補は多い。アルゼンチン代表監督は大丈夫か?<Number Web> photograph by UNIPHOTO PRESS

画面中央がスカローニ新監督。アルゼンチンの国際舞台での存在感低下を止めることができるのか。

ロシアW杯での決裂を重く受け止めて。

 さらにタピア会長は、自身が度々口にしてきた「10年計画」の軸となる構想として、「監督が交代してもそれまでのプロセスが無駄にならないプロジェクト」の重要性を強調。代表チーム強化プランが「監督の名前ではなく組織によるもの」であるべきだと話した。

 ブラジルW杯以後、わずか4年の間に3人の監督が入れ替わったことでチーム内に混乱を招き、挙句の果てにはロシアW杯期間中に選手と監督の仲が決裂してしまった事態を、協会として重く受け取っていることがよくわかる。

将来性はあるが経験不足?

 では、今回スカローニを正式に代表監督に任命したのは賢明な判断だったのだろうか。

 知り合いの記者3人の意見はNoだ。

 アルゼンチンの有力メディアで20年以上にわたって代表チームの取材にあたる彼らは、スカローニが代表監督に任命されたことについて全員が「反対」だと述べ、その理由として「代表チームは“監督が学ぶ場所”ではない」と声を揃えた。

 スカローニは現役時代、U-20代表とA代表でホセ・ペケルマンの指導を受け、8シーズン所属したデポルティーボを始め、スペイン、イングランド、イタリアの欧州主要リーグでプレーした経歴を持つ。

 2015年に引退したあと、指導者のライセンスを取得してマジョルカの下部組織のコーチとなり、サンパオリがセビージャの監督に就任した2016年6月、同チームのアシスタントコーチとして初めてトップチームの指導に携わることになった。

 そしてその1年後、サンパオリがアルゼンチン代表監督になると同時に指導スタッフに加わり、ロシアW杯後からU-20代表監督およびA代表監督代行の役目を任されている。8月には、U-20代表監督を任されてから2週間後に開催されたアルクディア国際ユース大会で優勝を遂げた。

 ペケルマンやサンパオリのような名将たちから教えを受け、選手としても指導者としてもW杯に出場した豊富な経験を活かせる貴重な人材であることは確かだろう。

 また、一緒にユース代表の指導にあたるパブロ・アイマール(U-17代表監督)とディエゴ・プラセンテ(U-15代表監督)とはチーム作りにおいて共通したアイデアと価値観を持っており、育成世代からの一貫した指導を目指す(厳密に言えば90年代にペケルマンが実施していた形式に戻す)上で好都合だと受け止めることもできる。

【次ページ】 優秀な指導者は大勢いるはずなのに。

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