球道雑記BACK NUMBER
香川で深夜の洗濯、千葉で再会。
ロッテ大木貴将と打撃投手の友情。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2018/12/02 10:00
2015年ドラフトの入団会見で背番号121だった大木(後列右端)。同期入団の平沢大河、成田翔らは一軍での出番を増やしつつある。
ロッテで絆の深さは変わらず。
四国アイランドリーグplusの年俸は80万円から320万円と言われている。支払い対象期間は3月から10月までの8カ月間。月額にして10万円から40万円といったところだが、出場選手登録を抹消され、練習生と呼ばれている期間はその分の給料は差し引かれる。
渡辺はこう続ける。
「練習生になる時期は、わりとよくあります。メンバーの入れ替わりがあるので期間としては短いんですけど、NPBで言ったら二軍に落ちるみたいな感じです。調子が悪くて結果が出なかったりすると、その間、試合に出られないので練習生扱いになる。代わりに練習生を上げて、という感じでやっている。わりとみんなが経験します。自分も怪我をしたときに練習生になる期間がありましたね」
当然、毎日の食費にも頭を悩ませる。
「たまに僕らを応援してる知り合いがお肉の差し入れをしてくれる。僕らは給料も少ないから、ご飯も困るだろうと持ってきてくれるんですよね。それを階段の踊り場で下に段ボールを敷きながら、IHコンロを出して焼き肉もしましたね」
そんな下積み時代を経験してきた2人だからこそ、千葉ロッテでともに過ごす今も絆の深さは変わらない。
たとえばシーズンオフの自主トレ期間、打撃投手兼スコアラーは本拠地であるZOZOマリンスタジアムに待機し、その日練習に訪れた選手の手伝いをする態勢になっている。大木が練習に訪れると、渡辺は非番であっても大木の練習の手伝いをすることがあるという。
「昔から知っている分、悪い言い方をすると“えこひいき”と見えてしまいますよね。こういう立場(チームスタッフ)の仕事なので、あまり良くないとは自分でも思います。ただ、昔からの縁もあるし一緒に頑張ってきた仲間なので、試合で打ったらやっぱり嬉しいですし、その手助けをしたいって思うじゃないですか。だから自然とそうしてしまう自分がいるんです」(渡辺)
自主トレにずっと付き合って。
そうした心意気に大木も当然、感謝の意を示す。
「昨年の自主トレはマリンだったですけど、その間もずっと練習に付き合ってくれた。本当に感謝しています。その気持ちが本当に嬉しいですよね」
よく選手たちは「普段世話になっているスタッフのためにも」と口にするが、大木はそれ以上の気持ちで、渡辺への感謝を示すとともに、仲間のためにも一軍で結果を残さなければと連日、休むことなく汗を流している。
2017年、大木が支配下選手に登録され、初の一軍帯同となったときのこと。渡辺は、まるで自分のことのように喜んだ。
「ロッカーに行ったら、たまたまナベ(渡辺)がそこにいて2人で、『ついにここまで来たか』って、そういう会話をしました。そのときもやっぱり嬉しかったし、ナベも自分の事のように喜んでくれたのがまた嬉しかった」(大木)