球道雑記BACK NUMBER
香川で深夜の洗濯、千葉で再会。
ロッテ大木貴将と打撃投手の友情。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2018/12/02 10:00
2015年ドラフトの入団会見で背番号121だった大木(後列右端)。同期入団の平沢大河、成田翔らは一軍での出番を増やしつつある。
2018年はファーム暮らし。
そしてシーズン終盤に差し掛かった2017年9月29日、大木がプロ初安打を記録すると、渡辺もその喜びをかみしめるように静かにガッツポーズを作った。2人の想いがひとつの形になる、そんな瞬間だった。
それでもプロの世界で生き抜くのは厳しい。
さらなる飛躍を誓って、2018年のスタートを切った大木だったが、一軍昇格の声がかかったのはわずか1回。それも先発投手のやり繰りの関係上、1日だけ空いた1枠に大木が入るという計画的なもので、翌日、大木は試合の結果に関係なく、再び二軍に戻された。
「最初から聞いていたことだったので仕方ないですよね。次はちゃんと一軍に居続けるように頑張るだけです」
そう言って、気丈に振舞ったが、その悔しさは他の誰かが計り知れるものではないだろう。
結局、大木は2018年の大半をファームで過ごした。彼のイースタン・リーグ成績は以下のとおりだ。108試合256打数72安打22打点、打率2割8分1厘。出場試合数は三家和真に次いでチーム内2位、打率も申し分ない成績だった。
しかし、セールスポイントである足、走塁の部分に関しては今後に幾つか課題が残った。盗塁は10個を記録したものの、失敗がそれを上回る15個。一軍の戦力として置くにはその辺りも課題になった。
小坂コーチからの指導。
さらに守備。現状は内外野を兼任する形で出場数を増やしているが、俊足を売りにする彼のタイプを考えると、この部分をもっと堅実なものにする必要がある。
今年の春先、大木は小坂誠二軍内野守備走塁コーチからある指導を受けた。
「守備で前に出られないのが弱点なんですけど、自分だとそういうことがあまり分からないし、気づかないことってあるじゃないですか。そこを小坂さんが動画を撮ってくれて、『実際、これくらいなんだけど、自分が思っているより出られている? 出られていない?』と教えてくれたことがあったんです。そこで全然、前に出られていない自分に気付かされて、そこから練習を重ねました」
小坂は「最初は打球を捕れなくても、合わなくても構わないから行けるところまで前に出て、合わなくともそこまで前に出る練習をしよう」と、大木にアドバイスを送った。
大木は練習で繰り返し意識したことで、だんだんと足が動くようになり、打球に合わせられるようになってきたという。「現状はまだまだ」と言うが、一歩ずつ弱点を克服することで、一軍での出場機会はぐっと増えていくはずである。