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18勝をさしおいてなぜ10勝投手が?
サイヤング賞・デグロムの突出度。 

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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posted2018/11/22 10:30

18勝をさしおいてなぜ10勝投手が?サイヤング賞・デグロムの突出度。<Number Web> photograph by AFLO

打線の援護がない投手としても有名になったジェイコブ・デグロム。しかし数字は彼の偉業を静かに記録していた。

シャーザーは投手二冠だが……。

 実は最後の最後まで、シャーザーに1位票を投じようと考えていた。その理由は彼が今年の「投手二冠」であるだけではなく、9回あたりの被安打数などの他の多くの部門でもデグロムを上回っていたからだ。

 選手査定の新しい指標であるWAR=Wins Above Replacementでは、デグロム(WAR9.5)がシャーザー(同9.2)やノラ(9.1)を上回っているし、投手WAR=Wins Above Replacement for Pitchersでも、デグロム(9.1)がシャーザー(8.4)を大きく上回っていたが、正直に言うと「伝統主義」的な考えから離れられなかった。

数々の偉業に加えて、勝率もクリア。

 だが、まず最初にデグロムが達成した次のような偉業に揺さぶられた。

「1.70以下の防御率は、過去100年間で11人目」

「防御率2点以下で260三振以上を奪い、50与四球以下で10被本塁打以下の投手は1912年以来、初めて」

「24試合連続のクオリティ・スタート(6回以上を投げて3自責点以下)と、同スタートを28試合も記録したのは同一シーズンでメジャー史上最高(50投球回以上を対象)」

「32試合の先発の内、13試合で7イニング以上を投げて1失点以下に抑えながらも8試合に勝ち星が付かなかった」

 最初の3つは歴史的な快挙。最後の1つは今季77勝85敗(勝率.475)でナ・リーグ全15球団中11位に沈んだチームで「勝利数」を稼ぐのが無理だった理由を明らかにしている。

 それでもまだ、「伝統主義」に縛られていたのだが、デグロムへの1位投票を決断したのは、彼が今季最終登板となった9月26日のブレーブス戦で10勝目(8回2安打無失点で)を挙げたからだ。

 二桁勝利に乗せたからではない。サイヤング賞受賞者の過去最少の勝利数は、2010年にフェリックス・ヘルナンデスが記録した13勝(12敗)だったが、「最後の1勝」でデグロムの勝率が.526となり、2010年のヘルナンデスの勝率.520を上回ったからである。

【次ページ】 「Dominantした投手」という価値基準。

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ジェイコブ・デグロム
マックス・シャーザー

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