第95回箱根駅伝(2019)BACK NUMBER
今季学生No.1ランナーは誰だ!?
箱根駅伝のエース区間、2区を狙う強者たち。
posted2018/11/22 11:00
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
Yuki Suenaga
まずは率直に訊いてみたい。
学生最強ランナーと呼ばれることに対してどう思っているのか。その問いに順天堂大学のエースである塩尻和也はこう答えた。
「少しプレッシャーに感じることはあるんですけど、それでも走らなきゃいけないのは変わらないので、そこはあまり気にしすぎないようにしています。ライバルですか? 明確に誰というのはありません。自分の調子が悪ければ当然負けることもありますし、そういった意味では試合にピークを合わせていくことが大事なような気がします」
自他ともに認める学生界のエースだ。
実績で、頭ひとつ抜けている。3000m障害でリオデジャネイロ五輪に出場したのは大学2年のとき。今夏のアジア大会では同種目で銅メダルを獲得した。さらにハーフマラソンの距離に変更された10月の予選会ではハーフ日本人学生歴代5位の好記録でチームの本大会出場に貢献。11月の全日本大学駅伝でも区間賞を奪い、もはや向かうところ敵なしの勢いだ。
自身の強みを「レースでの安定感」と語るが、それに加えて今季は勝負強さが増している。アジアの強豪を相手に3位の座を死守したアジア大会の走りがまさにそうだった。序盤から集団を先頭で引っ張ると、ペースの上げ下げを自らコントロールし、ラストスパートでの粘りにつなげた。終盤のスピードも力を増している。
三代の「偉大な記録」に挑戦。
2020年の東京五輪はトラック種目での出場を狙う逸材だが、最後の箱根駅伝に賭ける思いも強い。
区間5位、5位、10位とこれまで2区を3年連続で走り、区間賞はまだ取れていない。前回はチームが14秒差でシード権を逃しており、リベンジに燃えるのは当然だろう。
箱根駅伝の2区は花のエース区間。やはり思い入れは強いのだろうか。
「各大学のエースが揃う区間なので、意識するところはあります。とくに2年3年のときの走りには少し悔いが残っているので、4年目こそはという思いはありますね」
前回はひと月前に体調を崩し、調子が上がりきらないまま本番を迎えてしまった。体調管理に万全を期すのは、同じ轍を踏まないためだ。
2区の日本人最高記録は、順天堂大学の先輩である三代直樹が75回大会で打ち立てたもの。すでに20年破られていない大記録である。だが彼ならばひょっとして……そう期待する駅伝ファンは決して少なくないだろう。
「区間賞はもちろんなんですけど、今までずっと破られていないので、2区を走るからには目指したい記録ではあります。23.1km中、20kmの中盤に大きい上り下りがあって、最後3kmのアップダウンがとくにきつい。3年間走ってなかなかうまくいっていない部分があるので、走るたびに偉大な記録だと思います」
近い目標に「箱根駅伝の区間賞」、少し遠い目標として「日本記録の更新」を掲げる。3000m障害をはじめ、トラックの長距離種目からハーフマラソンまでカバーできる力強い脚力で、まずは自身初の箱根駅伝での区間賞を獲りにいく。