バレーボールPRESSBACK NUMBER
「45歳まで現役でバレーを続ける」
清水邦広は全治12カ月にも前向き。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYuko Tanaka
posted2018/11/14 07:30
今年2月、選手生命を脅かす大怪我を負ったが、地道にリハビリに励み、復帰を目指す。
心からバレーを楽しんでいる。
試合の場にユニフォームを着て臨んだのは、ケガをしたあの日以来初めて。今までは自分が当たり前に立っていた場所を外から見ると、新たな感情が芽生えた。
「心にめちゃくちゃ火がつきました。心底、俺もここに立ちたい、と。すごく純粋にバレーボールって楽しいな、と思ったし、何より、単純に、心からバレーボールを楽しんでいる自分がいました」
2012年ロンドン五輪や2016年リオデジャネイロ五輪を目指し、全日本の中心でエースとして責任を背負いながら戦っていた頃は、「楽しい」と思う余裕などなかった。男子が負けて、女子が結果を出せば、同じ競技者として「おめでとう」と思うよりもまず悔しくて、女子バレーが銅メダルを獲得したロンドン五輪の試合はほとんど見なかった。
いや、見なかった、ではなく、見られなかった、見たくなかった、と言うべきか。
銭湯で世界選で見るなんて。
まさか自分が、連日ゴールデンタイムで生中継されていた女子の世界選手権を、銭湯のサウナの端に座り、タオルをかぶって汗を流しながら他の客と共に見るのが日課になるなど思いもしなかった。
「『日本すごいな』とか『今日は勝つんじゃないか』と白熱しながら、バレーに関心を持って見てくれていることが嬉しかったですね。だから僕も見入っちゃって、8点と16点のテクニカルタイムアウトとセット間に休憩して、結局試合開始から試合終了までサウナにいるから、出る時はいつもフラフラ(笑)。
自分が戦っている時は、サーブミスで会場からため息が起こるのが嫌で、『わかってるよ、でもため息はやめてくれよ』って思っていたんです。だけど自分が見る側になると違いますね。チャンスボールでトスが悪くて打ち切れない時とか、思わず言っちゃうんですよ。『何やっとんねん、チャンスボールやぞ』とか(笑)。これだけ力を入れて見ていれば、ため息が出るのも仕方ないか、と実感しました」