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生きること=フィギュアスケート。
日本の超新星・紀平梨花の秘密。
posted2018/11/12 12:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
演技が終わった瞬間、観客席はスタンディングオベーションと歓声で称えた。
11月10日、フィギュアスケートのNHK杯女子フリー。紀平梨花は圧巻というほかない演技で優勝を飾った。
紀平は今シーズンからシニアに移行した高校1年生。このNHK杯は、グランプリ(GP)シリーズのデビュー戦でもあった。
ショートプログラムは、冒頭のトリプルアクセルで「踏切りが早くなっているんじゃないか」と公式練習で抱いた不安が出て転倒し、5位で終えた。
迎えたフリー。冒頭、当初予定していたトリプルアクセル-ダブルトウループではなく、2つめのジャンプを3回転と、難度をあげて成功。続くトリプルアクセルも成功させると、スピード感あふれる演技を披露する。
ショートからの切り替えに成功した理由をこう語る。
「(朝の練習で)変な踏み切りでもきれいに着氷しているとそのイメージで行けてしまうことがあるので。悪い踏み切りのときは跳ばないで、いい踏み切りができたイメージを覚えるようにしました」
「ガッツポーズせずには……」
「最後まで集中できました。濱田(美栄)コーチが『昨日はふわっとしたまま出てしまったから、闘争心を燃やしたほうがいいかな』と言ってくださって。いつもはにっこりして、リラックスしすぎているかなという感じで出ていたんですよ。今日は今までにないくらい集中しました。笑顔が少なかったかなっていうくらい」
終わってみれば、一度も失敗のない演技に、紀平は両拳を突き上げた。
「ガッツポーズせずにはいられなかった(笑)」
得点は154.72。総合得点224.31で、逆転優勝を飾ったのである。