プロ野球PRESSBACK NUMBER
西武の熱男・山田遥楓の憧れ。
松田宣浩は「常に目標とする人」
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2018/11/01 10:00
今季はプロ入り初ホームランも記録した山田遥楓。熱い男はまずは一軍定着を目指している。
ベンチで先輩たちが「やれ」。
二軍戦ではたびたび見せていたパフォーマンスを一軍の大舞台でも披露するとは、当初は考えていなかったそうだ。
「まず、自分が一軍でホームランを打てるとは思っていなかったんです。それが、打てた。ベースを一周して舞い上がったままベンチに戻ってきたら、みんなが『やれ』と。先輩たちに『やれ』と言われたんだから、やらなきゃって必死でした」
一気に山田の名前が野球ファン、そしてホークスのファンにも知れ渡った。話をしたことがない他の球団の選手からも「おまえが西武の熱男か」と声をかけられた。メディアではライオンズに関連付けて「獅子男」と形容された。「あれで名前と顔を覚えてもらえた」と笑顔で振り返る。
フォームも、声も松田そっくり。
九州、佐賀県の出身で、物心ついたときから家族揃ってホークスのファンだった。テレビや球場で試合を見るうちに、元気で、チームを献身的に引っ張る松田の姿に心惹かれた。ヤフオクドームに試合を見にいくと、スタンドからずっと松田だけを目で追った。サード側に席をとって間近でプレーを見ることもあった。
初めて本人に会ったのは、一昨年の自主トレーニングのとき。幼いころから松田のファンだったことを知る山川穂高が、以前から交流のある松田に山田を紹介してくれた。
「子供のころからずっと好きでした!」
そう山田が伝えると、「うん、聞いてるよ」と優しい笑顔で答えてくれたという。まるで野球少年に戻ったような笑顔で振り返る。
「最初に話をしたときは、めちゃめちゃ緊張しましたね。でも、そのあとは球場でお会いすると、僕が松田さんに気づく前に松田さんが僕を見つけたときには、必ず松田さんのほうから声をかけてくれるんです。一流の選手は人間性も素晴らしいんだなって思いました。
今年はシーズン最終戦のヤフオクドームで、スタメンで出させてもらったんですけど、昔、僕がワクワクしながら見ていた場所で、しかも憧れの松田さんと同じサードを守っている。そう思うと、めちゃうれしかったですね」
似ているのはパフォーマンスだけではない。ファウルを打ったあと一本足でケンケンする仕草やバッティングフォームなどもそっくりなのだが、決して真似をしたわけではなかった。「動画を繰り返し見ている間に、体に染みついてしまった」と語る。劣勢でも大きな声を張り上げ、チームを鼓舞する山田のスタイルも、松田に憧れるうちに自然と身についた。
山田にとって松田は常に「目標とする人」だった。