プロ野球亭日乗BACK NUMBER
丸佳浩は“逆シリーズ男”なのか?
復活のカギは三振と四球にアリ!
posted2018/10/31 11:30
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Naoya Sanuki
9対8の壮絶な乱打戦。
「いや……もう本当に凄いと思います」
本拠地・ヤフオクドームでシリーズ通算10連勝、今シリーズの初勝利を手にしたソフトバンク・工藤公康監督は、お立ち台で広島の粘りをしのいで、こう胸を撫で下ろした。
一時は6点差あったリードが1点差まで縮まり、最後は2死ながら一、三塁と絶体絶命のピンチを背負った。球場の半分近くを真っ赤に染めた広島ファンのボルテージが一気に上がったが、それも一瞬だ。
ソフトバンクの守護神・森唯斗投手が、この試合2安打していた野間峻祥外野手を1球でファーストゴロに打ち取り、激闘は終わった。
“逆転のカープ”を日本シリーズでも体現するような驚異的な広島の粘り。2点を先制された5回には安部友裕内野手のソロで、3点差とされた6回には鈴木誠也外野手のソロで反撃のノロシを上げる。6回にはアルフレド・デスパイネ外野手の3ランなどで4点を奪われ、7回にも高谷裕亮捕手のソロでダメを押されたかと思ったが、8回にいずれもこの試合2本目となる鈴木のソロと安部の満塁弾で5点を奪って驚異的な粘りを見せた。
終わってみれば1点差の大接戦だったが、工藤監督が振り返った1つのポイントがある。
それは――。
「丸くんのとこをしっかり抑えられたのがよかった」
この試合でシリーズタイ記録の1試合4三振を喫した、丸佳浩外野手の打席だった。
「僕が足を引っ張ってしまっている」
今季3割6厘、39本塁打、97打点で2年連続MVPが確実とみられている赤ヘルの主砲が、スランプに苦しんでいる。
「完全に僕が足を引っ張ってしまっている」
試合後にこう振り返ったように、この試合でも1回に先頭の田中広輔内野手が四球で出塁した1死一塁で自動エンドランがかかったフルカウントから、ソフトバンク先発のアリエル・ミランダ投手の真っすぐに手を出して三振。
走っていた田中も“甲斐キャノン”の餌食になり併殺となって先制機を潰した。3回にも2死満塁のチャンスでミランダのチェンジアップに空振り三振すると5回も空振り、先頭で打席に入った9回も森のナックルに空振りでタイ記録だ。