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強かったルメール&レイデオロ。
消耗戦の天皇賞、最後は底力勝負。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2018/10/29 11:30
今年のリーディングジョッキーをほぼ手中におさめたルメールに導かれ、レイデオロが天皇賞を制した。
ヨーイドンを避けた川田の仕掛け。
2コーナーを回りながら、川田将雅が乗る昨年の菊花賞馬キセキがハナに立った。後続に2馬身ほどの差をつけ、単騎逃げの形に持ち込んだ。
2番手の外に、北村友一が騎乗する昨年の皐月賞馬アルアインがつけた。
昨年のダービー馬レイデオロは、先頭から7、8馬身離れた中団の、周りに馬のいないところで折り合っている。
「ペースはちょうどよかった。レイデオロはとてもリラックスしていた。外からプレッシャーもなく、ずっとスムーズでした」とルメールは振り返る。
レイデオロの近くにいたミッキーロケットの和田竜二は「思ったより流れた」と言い、先頭から10馬身以上離れた後方につけたマカヒキの武豊は「ペースがゆるむところがなかった」と話した。
前半1000mは59秒4。少頭数で超スローになる可能性もあったわりには流れたが、それでも、けっして速い流れではない。このままだと前週の菊花賞のように、最後はヨーイドンの瞬発力勝負になってしまう。それを避けるためだろう、キセキの川田が3コーナーを回りながらじわっとペースを上げた。どの馬にもロングスパートが求められる、底力勝負に持ち込もうとしたのだ。
昨年のクラシック勢に割って入った1頭。
キセキが2馬身ほどのリードを保ったまま直線に入り、さらに後ろを突き放しにかかる。ラスト200m地点でもまだ先頭で、脚色は鈍っていない。
しかし、外からそれを上回る勢いでレイデオロが伸びてきた。ジョアン・モレイラのサングレーザーを引き連れ、1完歩ごとにキセキとの差を詰める。そして、ラスト100mほどでキセキをかわして突き抜けた。
勝ちタイムは、レース史上2番目に速い1分56秒8。
1馬身1/4差の2着がサングレーザー。そこからハナ差の3着がキセキ。さらに1馬身差の4着にアルアインが粘った。
昨年の三冠を勝ち分けた強豪3頭の間に、同じ4歳牡馬のサングレーザーが割って入る格好になった。