“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-16エースFW西川潤が目覚めた、
ゴールよりチームを勝たせる責任。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO
posted2018/10/14 17:30
AFC U-16選手権でMVPに輝いた西川潤。来年のU-17W杯へ、どこまで成長曲線を伸ばせるか。
点を獲らなきゃと思いすぎた。
「言われて当然だな、と。10番を任されて、早生まれで、しかもFW。“自分が点を獲らなきゃ”と思いすぎていました。森山監督の言葉を受けて、考え方を変えようと。点を獲りたい気持ちを失くすわけではないけど、それが先走りすぎていたのがグループリーグだったと気づけた」
心境の変化は、準々決勝のオマーン戦で好結果をもたらした。ボールを持ったら仕掛け、DFを2、3人引きつけてから周りに効果的なパスやクロスを送る。ポジショニングもよく、ゴール前へ勢いよく走り込み、決定的な仕事をこなす。相手にとってまさに脅威だった。
この試合、彼は“ゾーン”に入っていた。
「ものすごく周りがクリアに見えるんです。身体も動きやすいし、加速力も間違いなくこれまでより良かった。これは行けると思った」
西川が誘発したオウンゴール。
14分、センターライン付近でMF成岡輝瑠(清水エスパルスユース)のヘッドがFW荒木遼太郎(東福岡高)につながった瞬間、西川は裏のスペースに走り出した。
「よこせ!」
大きな声を挙げると、荒木がダイレクトでDFライン裏に送り込んだ。
一瞬にして相手DFの前に入り込んで胸トラップすると、両腕で相手をブロックしてから加速。GKとの1対1こそ阻まれたが、DFの足に当たってゴールラインを割った。
記録上はオウンゴール。しかし西川のゴールへの意欲、鋭い動き出し、正確なボールコントロールがあったからこそだった。
結果がやっと出た安心感からか、西川は決定機を何度も作り出すなどさらに切れ味を増した。1-1で迎えた81分、サイドに流れながら縦パスを受けた西川は、スピードを上げた瞬間、相手DFに肩を押されてバランスを崩した。
しかしそこで持ちこたえ、ニアに飛び込む唐山を視界に捉えた。ダイレクトで左足クロスを送り込み、日本をU-17W杯に導く決勝ゴールを生み出した。
このプレーこそ、森山監督の言葉を心から受け止めていた証拠だった。