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菊池雄星が明かすドラフトの真実。
N・ライアンの「世界一を目指そう」。 

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

PROFILE

photograph byIchisei Hiramatsu

posted2018/10/16 08:00

菊池雄星が明かすドラフトの真実。N・ライアンの「世界一を目指そう」。<Number Web> photograph by Ichisei Hiramatsu

今オフのメジャー挑戦の可能性が報道されている菊池雄星。彼の冒険の第二幕が始まろうとしている。

日米20球団と面談をした菊池雄星。

 各球団のスカウトは、指名候補に挙がっている選手たちの調査書を受け取る際などをうまく使って、選手たちとの会話を試みる。昨今はこの機会が重宝され、ドラフト候補選手に球団の方針や監督の考えを伝えるための「面談」として利用するケースがあるのだ。

 菊池はそれを日米20球団と行った。それほど、逸材の決断に多くが関わっていたということである。

 菊池は当時をこう回想する。

「あの面談は貴重な経験でした。1つは、純粋に各球団のプレゼンが興味深くてすごく勉強になりました。僕の指名にこだわって来てくださっているのを感じる球団がありましたし、一方では手ぶらで来られた球団もありました。それぞれに色が出ていて、話が聞けたのはよかったです。

 メジャーは、現役の投手が花巻まで来てくれて、石川遼君のパネルを持って『君は石川遼君と一緒に世界にはばたけ』と言ってくれたり、当時はレンジャーズだったノーラン・ライアン社長が『一緒に世界一を目指そう』という言葉をくれたりとか、貴重な経験でした」

高校生の夢を応援する雰囲気はなかった。

 もっとも、良いことばかりではなかった。

 面談では、メジャー球団からの金額提示は禁止されていたというし、日本球界のスターがアメリカに流出してしまうかもしれない状況に、日本の多くの野球人が批判的だったからだ。高校生の夢を応援しようという雰囲気はなく、菊池は厳しい状況におかれていたというのが現実だった。

 結局、菊池は日本の球団への入団を決断するのだが、この時のことを振り返っていま思うのは、もしこの時彼がもう1つの方の選択肢を選んでいたら、日本の野球界はどうなっていただろうかということだ。

【次ページ】 3年後、同じ高校の大谷翔平が……。

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