3年後、同じ高校の大谷翔平が……。

　周知のように、この騒動から3年後、同じような事態が起きた。

　菊池の高校の後輩である大谷翔平（エンゼルス）が、ドラフト前に「メジャー挑戦」を会見で発表した。同年のドラフトで日本ハムに指名され、「二刀流」という新たな夢と引き換えにして、大谷は夢の道筋を書き換えたが、もし菊池が先にアメリカに渡っていたなら、大谷は日本ハムの提案を受け入れただろうか。

　菊池は大谷の「メジャー挑戦会見」をみたとき、不思議なことだとは思わなかったという。

「同じ指導者の環境で育っていますし、うわさとして、大谷がメジャーを目標にしていると聞いていました。いよいよ（大谷が）新しい扉を開けるんだろうな、と」

　菊池のことを「あこがれの存在」と語っていた高校当時の大谷なら、後に続いていたのではないか。

菊池の決断の影響は大きかった。

　もちろん、人生において「たら」「れば」が存在しないことは百も承知の上で書いているのだが、大谷が高卒で海を渡っていたなら、最速160kmの達成も二刀流も、日本では見られなかったかもしれない。

　そう考えると、菊池があの騒動で出した決断の大きさは、計り知れないものだった。だが……

　そのことを菊池に聞いてみると、かぶりをふった。

「でも、僕の決断が野球界への貢献になったかどうか、それは今の段階ではわからないですよ」

　確かに、大谷が160km超えを達成し、二刀流を成功させたことによるプロ野球界への貢献度は高い。だが、大谷が高校を卒業してすぐアメリカに渡っていたら、また違った変化が日本に起こっていたということも十分にあり得る。

　何が貢献であるのかは、現時点でははっきりしていない。

　菊池はそう感じているのだろう。

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