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菊池雄星が明かすドラフトの真実。
N・ライアンの「世界一を目指そう」。
posted2018/10/16 08:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Ichisei Hiramatsu
錯覚かなぁ……。
頷きながら車の後方座席に向かった菊池雄星の表情を見て、ふと違いを感じた。
ホームで登板した日の恒例となっている駐車場でのぶら下がり取材。番記者の輪が解けると、2人でちょっとした雑談をするのだが、その日は、翌日の練習後に行うことになっているインタビューのテーマについて、一言二言を伝えた。
心の準備をして来てもらおうという狙いがあったのだが、その内容を伝えた時に、どこか、菊池が意を決した表情をした気がしたのだ。
伝えたのは2つのことだった。
「テーマはドラフト当時の話」
「あの騒動について聞くことになると思う」
菊池にとってのドラフト、とは。
プロ野球新人選手選択(ドラフト)会議が10月25日に開催される。
この時期の野球報道は、ドラフトの話題が中心になるが、多くのプロ野球選手にとっての「ドラフト当時の話」は、菊池の場合、少しニュアンスが異なる。指名された時の心境や会見の出来事などという話題ではなく、「あの騒動」が菊池にとっての「ドラフト当時の話」になるのだ。
あの騒動―――。
菊池は、2009年秋、学生に義務付けられているプロ志望届を岩手県高校野球連盟に提出すると、日米20球団との面談を行った。公な形でこれだけ多くの球団と面談の機会を持つのは、当時では異例のことだったが、その背景には、彼が高校を卒業して次なる夢の選択肢として、NPB球団に加えて、メジャーリーグをあげたことが発端になっている。
高校球児とプロ球団の接触は、スカウトであっても原則禁じられている。
スカウトが練習や試合を視察した際のちょっとしたあいさつまで細かく規制されているわけではないが、日米に限らず、スカウトは高校球児と会話を交わしてはいけない。
それが、プロ志望届を出した時点で可能になる。