猛牛のささやきBACK NUMBER
吉田輝星、最高の高校ラストゲーム。
「金足だからしょうがないでしょ」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2018/10/12 11:30
プロ志望届を提出したことで、ドラフトの目玉となった吉田輝星。人気、実力ともに1位クラスなのは間違いない。
「152キロ、これは出たなと」
初回からストレートが走った。145キロ、146キロ、148キロと球が勢いを増すたびスタンドはどよめいた。そして2回表、常葉大菊川の漢人友也を、自己最速を2キロ更新する152キロのストレートで三振にとり、球速表示を確認した吉田はガッツポーズを見せた。
「今日はしっかり腕を振れていて、調子は悪くなかったので、150も目指せるかなと思っていた。あの時は球場がざわついて、自分としてもリリースの時の手応えがあったので、『これは出たな』と。最後の試合で出せたのは嬉しいです」
ざわついていたのは相手ベンチも同じだった。
常葉大菊川の高橋利和監督はこう振り返る。
「球がうなってました。横から見ていると、彼のボールは一度下がってから、浮き上がるイメージ。『なんじゃこの球』と思って(苦笑)。これは当たらないぞと」
あ、もうこれ打てないなと。
結局、常葉大菊川打線は吉田に対し5回無得点に抑えられ、5連続を含む11個の三振を奪われた。
「選手たちは、ウエストぐらいのボールだと、ストライクゾーンだと思って振りに行くんですが、すべてボール球で、ここ(目線)ぐらいにくる。感覚的には30cmから50cmぐらいズレがある。キレが違いますね。スライダーを打ってほしかったんですが、スライダーもいいし、最終的に落ちる球も決まり始めて、あ、もうこれ打てないなと。
ピッチングも巧いし、3段階ぐらいレベルが上ですからね。バント作戦で行こうとしても、あのフィールディングでは……。それに、バントでもたぶん空振りしますね、あのボールは」と高橋監督はお手上げだった。
吉田は打撃でも存在感を発揮した。1回裏に1死二塁の場面で初打席を迎えると、センター前に先制打を放つ。送球間にすばやく二塁に到達すると、塁上では何度もスタートを切るそぶりを見せ、投手をゆさぶった。
6回表からライトの守備につくと、7回には頭上を越えそうな打球に飛びついて好捕し、一回転して球場を沸かせた。どこにいても、観客を惹き付けてやまない選手だ。