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イチローの調整と復帰への本気。
岩隈からの一打、実戦映像を凝視。 

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木崎英夫

木崎英夫Hideo Kizaki

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posted2018/10/11 11:30

イチローの調整と復帰への本気。岩隈からの一打、実戦映像を凝視。<Number Web> photograph by AFLO

9月26日、今季限りで退団する岩隈久志の始球式では捕手役を務めた。

調整そのものはどうだったのか。

 試合中はベンチに入れない立場となったが、ユニフォームを着てこれまで通り試合前の練習に参加。試合開始間際には各選手に声をかけ、いくつものダンスで緊張を和らげる儀式を施し、時には打撃投手も買って出るなど、入団会見で発した「力になれるなら何でもやりたい」を滞りなく履行した。

 9月30日の最終戦後に言った「できることは全部やった」は、来季以降の現役続行に含みを持たせた言葉ではなかったか。

 では、調整そのものはどうだったか。

 球宴を直前に控えた7月15日、イチローは高地コロラドでの前半戦最後の試合後、プレーしなくなった約2カ月半をこう振り返っている。

「想定していたことを超えることはないですね。自分ができることは限られていますから。だからもっと何かができるということはないし、そんな特別なことはないですよ」

室内練習場でのトレーニング。

 全体練習の打撃で漆黒のバットを手にするまでは、外野での球拾いでフィールドを縦横無尽に駆け回り、守備練習に充てる日々を淡々と重ねた。

 厳冬の日本で孤独なトレーニングを続け、契約を待ち続けた心境を「泰然」と表したイチローだけに、現況を見据えて取り組んだフロント入り後の調整にも焦慮する気配はまったくなかった。

 試合中のイチローはもっぱら室内練習場で過ごした。本拠地の場合、一塁ベンチ裏の階段を下り左へ曲がれば扉の向こうにグリーンのネットで覆われたケージがある。そこではトス打撃、打撃マシンが繰り出す球を打ち込み、また、途中出場を想定して準備を行う控え野手を相手に投げるというのがルーティーンになった。片隅に常設された初動負荷のマシンを使ったトレーニングも欠かすことはない。

 関係者以外の立ち入りが禁じられている室内練習場は取材者にとってはまさに常闇であり、イチローにとっては聖域である。試合終了までの数時間を過ごすその空間で、一工夫した練習に取り組んでいるのではないか。ふと浮かぶ想念をぶつけたのは8月24日、灼熱のアリゾナだった。

【次ページ】 岩隈相手に21球の駆け引き。

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