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プロ野球選手の昔の風格が凄かった!
衣笠祥雄の秘蔵写真とカメラマン秘話。
text by
朴鐘泰Park Jong Tae
photograph byHidenori Daikai
posted2018/10/06 11:30
独特すぎるファッションも、ここまで来ると一周回ってかっこよく見えてくる。中央のサングラスが衣笠さん。
「キヌさんと一緒にいると好きになっちゃう」
「なんせ30年以上も前の話だから具体的には覚えてないけど、たしか夏前、たぶん6月か7月だったかな。あの写真は3日間くらい密着させてもらって撮ったんだよ。1979年にカープが日本一になってから、取材する機会が増えたんだ」
昭和46年文藝春秋入社の大海さんは、10年前に60歳を迎えて定年退社された。30年前とはいえ、衣笠さんの印象は色濃く残っているという。
「キヌさんはね、ほんとに人懐っこくて、人を立てることを知ってて、とにかく紳士。当時のカープの選手たちは一匹狼タイプの選手ばかりだったけど、キヌさんは仲間と親密にコミュニケーションを取って、チームのつなぎ役的な役割も担っていたね」
カメラマンとしても、衣笠さんは格好の被写体だった。
「ぜんぜん気取らないの。いつも自然体。これほど撮りやすい被写体も珍しいくらい。だから勝手に絵になるんだよ」
大海さんが広島まで出張した際には、衣笠さんが飲みに連れてってくれたという。
「こっちはさ、取材なんだから当たり前に勘定を払おうとするでしょ。そしたらね、キヌさんはぜったい許してくれないの。『おまえの給料よりオレの給料のほうが高いんだから』って、その言い方もほんとに憎めなくてね。キヌさんと一緒にいるとね、キヌさんのこと、好きになっちゃうんだよ」
衣笠に心底惚れ込んでいた仲間たち。
好きになってしまう――。
今回の取材で会った、トレーナーの福永富雄さん、捕手の水沼四郎さん、4番の興津立雄さん、そして麻布の焼肉店オーナーの野原美智雄さんと、皆、在りし日の衣笠さんの人柄に魅せられた方々だった。
正直に白状すると、さまざまなSNSであの写真がどんどん広まってる様子を眺めながら、「おいおい、勝手に使うなよ」と独りごちていた。でもいまは、そんなみみっちい自分が恥ずかしい。
もうこの際、インパクト全開のこちらの写真、どうぞご自由にお使いくださいませ、と言ってしまいたい! でも、やっぱり著作権は出版社にとって大事な宝だから。
もし正式にご利用になりたい方はご一報いただきますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
だって……探し出すのに6時間かかったんだから。