沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
史上初の年間スプリント重賞4勝!
ファインニードルの絶対王者ぶり。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKyodo News
posted2018/10/01 11:35
「これは届かないのでは」という空気が競馬場を覆いかけた瞬間、外からファインニードルが飛んできた。
「着差はわずかでも、勝ちきるのが強さ」
逃げたワンスインナムーンが1馬身ほどのリードを保ったまま直線に入った。
それを、道中2番手につけていたラブカンプーとナックビーナスがかわそうとスパートする。それらの直後で馬群の隙を狙う、武豊のラインスピリットも手応えがいい。
上位争いはそれら先行勢に絞られたかに見えた。
ラスト200m。外からファインニードルが猛然と追い込んでくる。しかし、先頭との差はまだ5馬身ほどもある。
ラスト100m。内からラブカンプーが抜け出し、粘り込みをはかる。
しかし、そこからファインニードルがケタ違いの末脚を繰り出す。1完歩ごとに差を詰め、ゴールまでラスト2完歩で並びかけ、最後の1完歩でラブカンプーをクビ差かわしてフィニッシュした。
「直線に向いてからはしっかり伸びてくれました。着差はわずかでも、こうして勝ち切るところがこの馬の強さだと思います。春秋のスプリントGIを勝って、国内のスプリント界で一番強いことを証明できました」
調教ではのらりくらり、本番は強い。
川田が話したように、とりたいと思っていたポジションを他馬にとられ、4コーナーでは手応えが悪く、追いどおしになるなど、けっして理想的な展開ではなかった。にもかかわらず、最後は「これぞ王者」という末脚で計ったように差し切った。
「最近は、調教でも返し馬でも、あまりよさを見せてくれなくなったんですよ。競馬に行けばいいところを見せて、走ってくれると信じて乗っています。そういうところが春とは変わってきていますね」
川田の口から何度も「信じる」という言葉が出た。
多少ギクシャクした展開になろうが、馬の力を信じ、脚があれば勝てるはずだ、という進路を確保した。それにファインニードルが応えた。