オリンピックへの道BACK NUMBER
柔道と並行して医師を目指す二刀流。
朝比奈沙羅の芯はずっと強いまま。
posted2018/09/30 17:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Kyodo News
自ら進む道の正しさを証明する勝利だった。
柔道女子78kg超級の朝比奈沙羅が、2度目の世界選手権で初優勝を果たした。昨年は準優勝に終わり、悔しさをこらえきれなかった。
手にした銀メダルをベッドの横に画鋲で止め、雪辱を期した今大会。順調に勝ちあがった朝比奈は、決勝でこの階級の第一人者、リオデジャネイロ五輪銀メダリストのオルティスと対戦した。
白熱した試合は両者ともにポイントをとれないまま、延長戦に突入。朝比奈は積極的に前に出て組み合い、技を仕掛けた。そして決着がついたのは6分24秒。オルティスが指導3つで反則負け。朝比奈の集中力と気迫、粘り強さがもたらした勝利だった。
そしてこの優勝は、自身の選択の正しさを証明するためにも必要なものだったのだ。
柔道を極めつつ、医師を目指す。
今大会の個人戦の締めくくりとして登場し、日本女子の全階級メダル獲得にもつなげた朝比奈は、異色の柔道家でもある。
朝比奈は現在、柔道の名門である東海大学4年生。だが昨年9月に柔道部を退部すると、フリーで練習に取り組むようになる。今年4月には学生ながら「パーク24」の契約社員となり、実業団の選手として活動することになった。これは柔道界では初めてのことである。
異例と言える立場になったのには、朝比奈が思い描く人生計画が関係している。それは柔道を極めつつ、医師を目指すというものだ。
朝比奈は小学2年生のときテレビで柔道の試合を観たことをきっかけに、柔道の世界へと足を踏み入れた。その後、瞬く間に台頭し、華々しい経歴を刻んできた。中学、高校で日本一となり、全日本ジュニア選手権も2度制覇。
活躍は国内にとどまらず、世界カデ選手権と世界ジュニア選手権で金メダルを獲得し、中学3年生からはシニアの大会にも出場するなど、将来を嘱望される存在となった。