フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
挑戦し続ける五輪王者、羽生結弦。
オータム・クラシックでの新境地。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byMATSUO.K/AFLO SPORT
posted2018/09/25 15:00
世界のフィギュア史に残る偉業達成後も、さらなる高みを目指し続けている羽生結弦。
「表現にはまだ至ってない」と厳しい自己評価。
だが初披露した感触は「表現とかにはまだ至っていない」と厳しい自己評価を下して、羽生はこう言葉を続けた。
「ジャンプがきれいにきまってストレスフリーな状態じゃないと、プログラムは表現しきれない。これからもっと練習して、僕自身の感覚でも後ろめたい思いがないような、いい感覚で両方ともプログラムを滑りきりたいと思っています」
あくまで羽生にとって表現力とは、自分にできる技術をすべて完璧に見せた上でこそ成り立つものなのだ。
「今回ギリギリの点数で何とか勝つことはできましたけれど、自分が滑りたかったプログラムに対する実力があまりにも足りないので、練習を積んでいかないとダメだなと思います」
オリンピック連覇をなし遂げ、世界歴代最高スコアを持っている選手の口から出たにしては、謙虚すぎる言葉だった。
「試合で勝ちたいという気持ちが強くなった」
多くのオリンピックメダリストたちが競技休養、あるいは引退宣言をしている中で、普段のシーズンと同じように淡々と戦い続けているという、そのことだけでも、羽生の存在は特殊である。
だがそんな彼だからこそ、数々の新記録を出し続け、歴史的な偉業を成し遂げてきたのだろう。
「(この)試合に出て一番良かったのは、やっぱり試合で勝ちたいという気持ちがすごく強くなったこと。オリンピックが終わってからある意味で抜けていた気持ちが、自分の中に戻った。火をつけられた状態。これからさらに頑張りたい。また一皮むけたなと思っていただけるような演技を目指したいです」
今シーズン、さらに羽生がどこまでの進化を遂げていくのか、楽しみである。