フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
挑戦し続ける五輪王者、羽生結弦。
オータム・クラシックでの新境地。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byMATSUO.K/AFLO SPORT
posted2018/09/25 15:00
世界のフィギュア史に残る偉業達成後も、さらなる高みを目指し続けている羽生結弦。
優勝するも悔しい表情を見せた羽生。
フリーでは、冒頭の4ループと4トウループはきれいにきまったが、4サルコウで転倒。次に予定していた4トウループから3アクセルへの連続ジャンプが、2トウループの単発になった。演技を終えると、悔しそうな表情を見せた。
総合263.65で優勝はしたものの、ミックスゾーンには神妙な表情で現われた。
「本当に初戦毎度で申し訳ないんですけど、また260ぐらいしか取れないんだな、と……」と口元を引き締めた。
今シーズンから、男子フリーの長さが30秒短縮されて4分になり、どの選手のプログラムも、後半に忙しくぎっしり詰め込んだ印象は拭えなかった。滑った手ごたえを聞かれると、羽生はこう答えた。
「4分だからきついということではなくて、本当にただ単に自分の実力不足が出ているという感触がありました。これから練習してしっかりとこのプログラムの構成に耐えうる身体を作らないとなと思います」
「本当に滑りたかった曲」
平昌オリンピックのあった昨シーズン、SPのショパン、フリーの『SEIMEI』の2本とも以前に使用したプログラムを選択したことで、一部から批判の声もあった。
だが昨年の羽生には、オリンピックを連覇するという優先事項があった。特に怪我で練習時間を大幅に削られるという予想外の事態にもなり、結果的に見ると滑りなれたプログラムを選択したことは勝利の鍵だったと言えるだろう。
そして2度目のオリンピック金メダルを手にするという大きな目標を達成した今シーズン、羽生は今度は表現面において新たな領域にチャレンジしているように見える。
「本当に自分自身が滑りたかった曲でプログラムを作っていただき、自分が今できることをプログラムの構成として入れ込んでいただいている。楽しめればいいなという気持ちが強く出ているプログラム」と、新プログラムを形容した。