野球のぼせもんBACK NUMBER
172cmで2mの記録を超えてやる!
福岡の変則左腕・嘉弥真新也の意地。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2018/09/26 11:45
サイドスローの変則左腕という嘉弥真新也。沖縄出身のホークス生え抜き選手である。
佐藤義則コーチの助言がきっかけに。
「何かを変えなきゃ僕はプロの世界で生きていけないと思っていたところに、佐藤(義則)コーチ(現楽天コーチ)が背中を押してくれたんです」
あの頃、自分のスタイルを見失っていた。
「基本的には短いイニングを任されることが多いので、強いボールで抑え込んでやろうと考えていました。オーバースローの頃は140キロ台中盤をマークして、そこそこ速い球を投げていましたが、細かなコントロールが出来なくなっていました。
打たれては悩むことの繰り返し。だんだん自分のフォームばかりが気になるようになり、打者と戦う前に自分と戦ってしまっていました」
吉野誠、遠山奨志の例で説得を。
それは嘉弥真に合わないと考えた佐藤コーチは、嘉弥真にこんなアドバイスをしたという。
「阪神でコーチをしていた時('02年~'04年)、吉野誠ってピッチャーがいたんだ。アイツも入団当初は上から投げていたけど、なかなか結果が出なかったことでサイドスローにした。そこで活路を見出したんだよ。
ダイエーと日本シリーズをやった年('03年)の活躍なんて、本当にすごかったからな(自己最多56試合に登板)。他に遠山(奨志)の話もしたな」(佐藤コーチ)
具体例が示されたことで、嘉弥真の心の中に言葉がすっと沁み渡った。
その時の決断で今に至る。球速は落ちることを覚悟していたが、横から投げて現在でも145キロ近いボールを投げ込む時がある。
「やってみたら、上から投げていた頃よりも腕が振れる感覚がある。結果的に140キロをキープできたのは良かったと思います」