球道雑記BACK NUMBER
2000安打間近のロッテ福浦和也。
16年目・金澤岳に伝わる“イズム”。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2018/09/14 08:00
3年半ぶりの本塁打で2000本安打まであと4とした福浦和也。ロッテナインの喜びようがその人格者ぶりを物語る。
里崎、田村らとポジション争い。
チーム在籍が福浦に次いで現役2番目の長さになる金澤は、その模範生と言えるだろう。
たとえば取材で金澤に声をかけると、いつも気持ちが良いほどの明るい笑顔で対応し、挨拶ひとつをとってもファームで過ごす選手の誰よりもはっきりした口調で交わす。こうした姿勢は福浦とダブる部分だ。
若手時代は里崎智也、橋本将に続く第3の捕手としてベンチを温めた。中堅になって以降は、田村龍弘、吉田裕太、江村直也らの陰に隠れ、ファームで過ごす日々も多くなった。
それでも愚痴を吐くこともなければ、腐るわけでもなかった。
金澤は言う。
「今、若い選手がチャンスをもらっているように、自分も若い時にチャンスをもらっているわけですよ。それを掴み切れなかったから、今の立場にいると思うんでね。それは結果を出せなかった、期待に応えられなかったというだけで、試合に出られないから……という考えには一切ならないですよ。
若手が多くチャンスをもらえるのは当たり前のことだし、この後、自分にチャンスが来るのかどうかは分からないですけども、今までやってきたことと、自分の力を信じて。やるしかないのかなって、そう考えていますよ」
内心では悔しい想いも数多くしてきただろう。しかし、それを外には決して見せない。根っからのポジティブ思考。“福浦イズム”と言ったら少し大袈裟かもしれないが、彼はそうしたものを感じさせる選手の1人である。
春先の代走で出場し、負傷離脱。
今年の春先にこんなことがあった。
キャンプ、イースタン教育リーグと好調を続けてきた金澤に、オープン戦も残り少なくなった3月20日に一軍昇格の声がかかった。
しかし、その日行われた埼玉西武とのオープン戦で、6回表に福浦の代走として出場した金澤は、走塁時に左足に強い痛みが生じ、すぐさま交代となった。
検査結果は左大腿二頭筋筋損傷。全治4~5週間の診断だった。
この日の所沢市の最高気温は11度、回を追うごとに寒さが増していった気温は、最終的に5度近くまで下がり、まるで真冬に戻ったようだった。当然、途中出場の選手にとっては準備が難しかった。
金澤は今年で34歳。年齢的にも、そう何回もやって来ない貴重なチャンスだった。それをわずか数分、いや数秒で奪われる形となった怪我。さすがに彼のメンタルが心配になった。