プロ野球亭日乗BACK NUMBER
そのスライダーで一流打者を育てた。
悔いなき投手人生、杉内俊哉の引退。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2018/09/14 13:30
引退表明の記者会見を終え、花束を手に引き揚げる巨人の杉内俊哉。今後の話はまだ出ていないが、ぜひ“杉内俊哉2世”を育てて欲しい。
筒香「こんなすごい球を打てるんかな」
「確か北九州だったと思います。初めて杉内さんのスライダーを見て、“当たる”と思ったら、そこから曲がってストライクになった。強烈でしたね。
その瞬間に“これがプロのボールか……こんなすごい球を打てるんかな”と思わされたし、あの1球でプロの凄さを実感させられました」
筒香もまた、杉内のスライダーを瞼に刻んだことが一流への階段を上る原動力の1つになった打者である。
いい投手がいるからいい打者は育つ。
一流の技を見せつけられたからこそ、それを乗り越えるために自分も一流へと育たなければならない。打者にとって目の前にそびえ立つ壁になれる投手、それが杉内だったのである。
マウンドでの佇まいと激しい闘争心。
「あのチェンジアップは2回空振りができるよ。それくらいスピードの落差のあるボールだった」
こう語ったのはやはり巨人の阿部慎之助内野手だ。
杉内の恐ろしさを知るのは、彼らだけではないし、その恐ろしさはスライダーやチェンジアップだけでもない。
投手としてのマウンドでの佇まいと激しい闘争心。スペシャルな技術とただならぬ勝負への執念のすべてをさらけ出して、18.44メートル越しに打者と対峙してきたこと。
それが投手・杉内の大きな仕事だったのである。