フランス・フットボール通信BACK NUMBER
スポーツを通じて女性に真の自由を!
パキスタンの女子サッカー最前線。
text by
ポリーヌ・オマンビイクPauline Omam Biyik
photograph byDiya FC
posted2018/09/05 10:30
写真中央が、パキスタンにおける女子サッカーのパイオニアであるサディア・シェイク。サッカーを通じて社会の変革を図っている。
女性に何の権利も与えられない土地で。
この経験から自信と手ごたえを得たムナワルは、「パキスタン全土に女子スポーツを普及させる」べく「大学での受け入れとスポーツへの奨学金給付」を求めて政府とかけ合った。
ホープ・ソロとアレックス・モーガン(ともにアメリカ女子代表)のファンであるひとりの若者の野心的なプロジェクトが、多くの女性たちに教育を受ける機会を提供したのだった。
彼のさらなる願いは、社会の変革が進み、とりわけ大きな弊害である低年齢での結婚がなくなっていくことである。
国内の幾つかの地域では、急進的なイスラム主義により女性の権利が大きく制限されている。
「キベルとパクトゥンクワ、バルチスタンでは、女性には何の権利も認められていない。教育さえ受けられない。だからサッカーをすることなど想像すらできませんでした」とムナワルは語る。ただし日常の様々な困難とは裏腹に、サディアもムナワルも活動を続けていくうえで宗教的な問題に直面したことは一度もないという。
「宗教的な障害は何もない。何があってもうまく解決するからと親たちには説明しています」とサディアは言う。
「ここにはあらゆる人が住んでいる。金持ちも貧乏人も、イスラム教徒もキリスト教徒も。お互いに助け合い、勇気づけながら生きていくことを学ぼうとしています」
パキスタンというモザイク国家。
パキスタンという国は広大であると同時に多様でもある。
幾つもの異なる世界が距離を保ちながらひとつの国の中で共存しているのである。それらは理解しあうことはもちろん、混じり合うこともなければ接触することすらない。
相次ぐ戦争で荒廃しながら、国は体制により維持されているイスラム教のモラルと、男女の基本的な平等を認めた憲法の間で揺れ動いている。