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神戸製鋼はカーターだけじゃない。
司令塔パーカーが魅せる黄金の左足。
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph byGetty Images
posted2018/09/04 17:00
開幕節となるNTTコム戦の勝利に貢献したパーカー。祖国の英雄であるカーターとの競演でさらなる飛躍を目指す。
「成功率96%」という異常なキック。
パーカーは南半球最高峰の国際リーグ・スーパーラグビーの2018年シーズンで、サンウルブズに新加入。13試合に出場し、プレースキック成功率96%(50回中48回成功)という超人的な成功率を披露。そのなかで38回連続成功というスーパーラグビーレコードまで打ち立ててしまった。
2015年W杯で日本代表だった五郎丸歩が、当時のエディー・ジョーンズHCから「成功率85%」を厳命されていたことを思えば、「成功率96%」がいかに現実離れしているかが分かる。
サンウルブズは今年、チーム史上最多の1シーズン3勝を挙げた。その全3試合のすべてに10番で先発したパーカーは、勝利した3試合の計131得点のうち、実に74得点を記録。
その中には、日本代表のジェイミー・ジョセフHCが「パーカーのスキルはワールドクラス」と評した第13節レッズ戦の36得点(1T、5G、7PG)、劇的な逆転勝利をもたらした第14節ストーマーズ戦での“サヨナラドロップゴール”も含まれる。
「正直なところ、なぜそうなったのか自分でも分かりません(笑)」
成功率96%を記録したシーズンを笑顔で振り返ったが、もちろん偶然ではない。2015年に1シーズン在籍したパナソニックでは、トップリーグの順位決定トーナメントで24本のキックをすべて成功させ、トーナメントMVPに選出されているのだ。
彼ほどの選手でもNZでは控えに。
ただこれだけの選手でも、ラグビー王国NZでは控えに回ることが多かった。
身長175cm、体重82kgの小柄な司令塔。スーパーラグビーのハイランダーズ(ニュージーランド)には4季在籍したが、出場は30試合。途中出場が多かった。
NZ代表のダミアン・マッケンジーのように、後半から途中出場して強烈なインパクトを与えることは難しい。先発出場し、アベレージで貢献できる場があれば――。
だから、13試合中10試合で先発10番を背負うことのできたサンウルブズは、パーカーにとって願ってもない舞台だった。周囲の期待に、成功率96%という最上級の結果で応えた。