“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
昌子源の悔しさに学んだ高校3年生。
“鹿島のCB”を背負う男、関川郁万。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/08/31 16:30
Jクラブ入りによる異常な期待にもようやく応える覚悟ができた、という関川郁万。
これまでにない注目を浴びる恐怖が。
「1、2年生の頃は自分が日々成長している実感があったし、周りの評価も気にすること無く、自分のことだけに集中できていた。正直『自分のプレーを出して、チームに貢献できればそれでOK』とだけ思っていました。今年に入ってからも、怪我でプレーできていなかったので、リハビリに集中することができた。でも、いざ復帰してみると……周りの雰囲気が全然違った。
すでにプレミアリーグが始まっていて、インターハイ予選も始まる直前の重要な時期での復帰だったので、正直戸惑いました。チームの期待、関係者の方々の期待、相手選手からの目……。これまで経験したことが無いほど、敏感に感じました」
彼が実戦復帰したのは、インターハイ予選準々決勝の市立柏戦のこと。
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選手権決勝の前橋育英戦から実に5カ月ぶりの実戦とあって、試合勘を取り戻せていない彼のプレーは精彩を欠いた。その試合はなんとか勝利をものにしたが、続く準決勝の習志野戦では、大きな落とし穴が待っていた。
敵の作戦は「関川を狙え!」。
習志野との試合は、勝てばインターハイ出場(今年まで千葉は2校がインターハイ出場)という重要な一戦だったが、立ち上がりから関川は不調に見えた。身体が重いようで、簡単にかわされたり、裏を取られるシーンが目立った。
「練習に復帰した週は身体も軽くて、『このまま行ける』と思っていたのですが、実戦に復帰したら思うように身体が動かないと感じました。徐々に身体の重さを感じるようになって、それを一番感じたのが準決勝でした……。
プレー的にもそうなのですが、まだ目が慣れないと言うか、選手権のときのように頭は働いているのに、目や身体がついて来ないという状況でした」
関川のコンディションの悪さを習志野はすぐさま見抜き、ベンチからの指示も「関川を狙え」。その習志野の狙いは的中し、試合を決定付けた決勝弾は関川のゾーンが起点となって生まれてしまった。
0-1で迎えた前半アディショナルタイム1分でのこと。
味方が自陣で敵MFにボールを奪われ、ドリブルで仕掛けてきたのに対し、関川は反応が遅れた。そのまま不用意に食いついていってしまい、かわされてから裏のスペースを突かれての失点。
後半に1点を返すも、このゴールが決勝点となり、流通経済大柏は1-2の敗戦。前年度王者がインターハイに出場できないという波乱が起こったのだ。