柔術やサンボ経験のあるOBに転がされ。

　ところがそれが功を奏する。柔道部に、柔術やサンボの経験があるOBがいた。そこで寝技を学んだ。

「毎日、コロコロしてました」

　当時をそう振り返る。

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　寝技、さらに関節技を身につけると、大学3年時に全日本学生体重別選手権で東京学芸大学の選手として初優勝を果たすなど徐々に結果が出はじめた。何が才能開花のきっかけになるかは本当に分からない。

　実業団に進んでから怪我で離脱した時期もあるが、2016年には講道館杯、グランドスラム東京を制する。

　これらの成績もあって翌年の世界選手権代表をつかみ、決勝で志々目愛に敗れたものの銀メダルを獲得する。

「とんとん拍子でした」と言うように、階段を上がっていった。

「柔道が、また楽しくなってきました」

　一方で、ランクが上がったことは角田を苦しめる要因にもなった。世界選手権銀メダルという実績や注目度が重圧となり、世界選手権後のグランドスラム東京は7位と低迷した。「楽しくないです」と、涙とともに語った言葉が胸の内を表している。

　結果が出ない大会が続いたが、それでも心を整理して徐々に調子を取り戻していく。そしてついに、今春の全日本選抜体重別選手権で初優勝を遂げた。

「柔道が、また楽しくなってきました」

　笑顔で嬉しそうに語ったが、2年後の東京五輪を考えたとき、安閑とはしていられない。同じ階級には志々目、そして伸び盛りの阿部詩などライバルがひしめいているからだ。

　実際、国際大会の結果などから、秋の世界選手権代表には志々目、阿部が出場し、角田はアジア大会に回ることになった。

　だからこそ、「ここで負けたら離される」と危機感を抱いてアジア大会で結果を出したことの価値は大きかった。

【次ページ】　鼻骨骨折をボールペンで……。