フランス・フットボール通信BACK NUMBER
あの“名将”ベンゲルは今なにを?
注目の次の就職先はどこが有力か。
text by
フィリップ・オクレールPhilippe Auclair
photograph byLaurent Argueyrolles/L'Equipe
posted2018/09/03 10:30
引退後、サッカーイベントで子どもたちと戯れるアーセン・ベンゲル。いまだにそのスタイリッシュな佇まいは健在だ。
くつろぐ姿を各地で目撃されているが……。
5月末には元アーセナル副会長で旧友のデヴィッド・ディーン、ノキアのマーケティングディレクターであるバリー・フレンチと、トルコのボドルム近くに停泊したヨットで寛ぐ彼の姿が見られた。
氷入りのバケツでよく冷やされたシャンパンが清涼な雰囲気を醸し出し、ふたりと談笑するベンゲルは、同じ時期に契約終了を迎えるウィルシャーの処遇に頭を悩ませていた彼とはまったくの別人だった。
6月初頭には別の船に彼の姿を見ることができた。それは彼の娘が通う学校のあるケンブリッジを流れるカム川に浮かぶ英国の伝統的なボート“パント”の船上での風景だった。求められて2枚の自筆サインを書いたり、周りを囲む200人以上の人々にスマホで写真を撮られながら、輝く太陽のもと心からの微笑みを浮かべたベンゲルは悠々と川下りを楽しんだのだった。
歳を取りすぎた指導者に残された道は?
ワールドカップやEUROといった大きな大会ではほぼ必ずテレビ解説を務めてきたベンゲルには、ロシア・ワールドカップも例外ではなかった。
フランスのテレビ局「ビーインスポーツ」との仕事は、アーセナルで次の対戦相手に毎週のように集中してきた彼には、これ以上にない気分転換でもあった。
またFIFAから「レジェンド枠」でVIPとして招待され、サッカーの歴史を築いてきたビッグネームたちと大会を楽しむこともできた。
将来を考えるための2週間の猶予期間はあっという間に過ぎたが、これからどうするのか彼はまだ一言も言葉を発してはいない。
とはいえ、このままずるずると決断を先送りにするのも考えられない。
また彼自身が語っているように、ごく普通のクラブを即座にトップレベルまで引きあげるには歳を取りすぎている。そこまでのストイックさを抱いて大仕事をする時期はもう過ぎたのだった。
となると残る可能性としては、2022年のカタール・ワールドカップに向けてどこかの代表で指揮を執ることか――。