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G1優勝の棚橋弘至、充実した暑い夏。
オカダ・カズチカに勝つという決意。
posted2018/08/17 15:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
棚橋弘至は充実した夏を感じていた。
棚橋は8月12日の日本武道館での優勝決定戦で飯伏幸太との35分の熱戦の末、3年ぶりの3度目のG1クライマックス優勝を飾った。
だが大会前までは、棚橋の体はボロボロでG1という1カ月近いロングランに耐えられないのではないかという危惧があったのも事実だった。
一発勝負なら、気力でどうにかなるかもしれなかった。だが、41歳の「エース」の体がどれだけ痛んでいるかは棚橋本人が一番よく知っていた。
G1のシリーズが始まって1週間が経ったころ、棚橋に「どう?」と聞いてみた。
棚橋は「元気ですよ。ほらこんなに」とガッツポーズのように腕を折り曲げて力こぶを作って笑顔を見せてくれた。
「明るいなあ、棚橋……」と私は感じた。
「棚橋、もう無理しなくていいよ」と。
「ケガで苦しんで、年に何回も欠場して、棚橋、もう無理しなくていいよ」と上層部やオカダ・カズチカから言われた。
「でも、そんな体でも、オレのために一生懸命、動こうとしてくれた。だから感謝の気持ちで、この自分の体を受け入れて、できる技で、できる戦略で、今の棚橋弘至で戦えばいいんだ」
棚橋は自分にそう言い聞かせた。
プロレスラーを続けていれば、いつかこういう時と遭遇することは論理的にはわかっていた。だが「疲れない」ことになっている男は、無理を承知でがむしゃらに戦ってくるしかなかった。