プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
G1優勝の棚橋弘至、充実した暑い夏。
オカダ・カズチカに勝つという決意。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2018/08/17 15:00
まさに決死! コーナーポストから場外の飯伏幸太に飛んでみせた棚橋弘至。
「焦りはない」とは言うが……。
プロモーションのため、1日に20本近いインタビューを受けまくった日もあったという。
「苦しい」「苦しくない」の自問自答も続いた。
ケガを繰り返してしまったことで、「焦りはない」といくら言い聞かせても現実的に戦えないという事実が棚橋を追い詰めていった。「引退」の2文字など頭をよぎることはなかったと言ったらウソになる。だが、それを懸命に打ち消し続けたことで、棚橋は生き残った。
ありのままの自分で、まるで悟りを開いたような気持ちになれた時、焦りは消えていた。
「全力の姿をファンに見せたい」
棚橋は今年のG1シリーズのサブタイトルである「BE A SURVIVOR!」は自分のために用意されたフレーズだと信じて、生き残るために戦ったのだ。
生き残るために、自らの身体の限られたエネルギーを節約したこともあった。
勝つことに徹して、切り返しの押さえこみ技で3カウントを奪って勝ち点を重ねた日もあった。
エースとしてはきれいにすっきりと格好良く勝ちたいというのが本音だ。
「歯がゆいですよ。日本全国を回るじゃないですか。ファン全員の前で、棚橋弘至の元気な姿を見せたいんですよ。全力の姿をね」
そうするために棚橋はもっと鍛錬を続けて、日本全国のリングに立ち続けると新たに約束した。
そして、棚橋は温存していた残りの全てのエネルギーを優勝するために使った。コーナーポストから場外へもハイフライフローで飛んで見せた。
「今の自分に何ができるか。できないか。使える技は限られるかもしれないけど、自分の思い描く戦いができている、そういう意味での充実感です」