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夫はJの監督、私はリポーター。
高木聖佳は今日もピッチから情報を。 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byAtsushi Iio

posted2018/08/18 09:00

夫はJの監督、私はリポーター。高木聖佳は今日もピッチから情報を。<Number Web> photograph by Atsushi Iio

Jリーグ中継の「声」でおなじみの高木聖佳。選手たちの一挙手一投足を伝えようとピッチ脇で奮闘中だ。

マイクを向けた監督は……夫。

 そんな高木のインタビューが大きな反響を呼ぶのは、'16年4月のことである。

 J2リーグ第9節、水戸ホーリーホックがヴェルディを下した一戦で、高木がマイクを向けた勝利チームの監督は、'03年に上京する際に付き合っていた男性であり、'10年に結婚した夫の西ヶ谷隆之(現・J3相模原監督)だったのだ。

「それまではコーチだったんですけど、前年の途中で監督に昇格して。その週は『勝ったらインタビューあるかもね』とか、『うまく答えてね』くらいは話したかな」

 実は、この妻による夫へのインタビューは、実現しない可能性があった。

 かつて西ヶ谷がアルビレックス新潟のコーチだった頃、高木はフロンターレ対アルビレックス戦の練習取材とピッチリポートを遠慮したことがあった。

 しかし、今回は監督である。しかも、西ヶ谷は2年契約を結んだ1年目だったため、その週の担当を外れるのではなく、担当自体を降板する旨をクラブに伝えたのだ。

「そうしたら、広報の倉林さんが『何を言ってるんですか?』って。『2004年からずっと見てくださってきて、高木さんが情報を漏らすような人じゃないのは分かってます』って。羽生(英之)社長も『おまえ、何を気にしているの?』とおっしゃってくれた。その心遣いが嬉しくて、ちょっと泣きました」

 高木は彼らの気遣いや優しさに感謝するが、一方で、高木の長年にわたる誠実な仕事ぶりが評価されてのことだろう。

監督がいかに大変な職業かを実感。

 夫が監督になったことで、これまで以上に実感したことがある。

 監督がどれだけチームと向き合い、いかに大変な職業か――、である。

「オフの日は朝から晩までパソコンとにらめっこして分析したり、モチベーションビデオを作ったり。夜中に寝言で『コンパクト!』とか叫ぶこともある。私たちって簡単に、『なんであの選手を使わないのか』とか、『もっと早く選手交代をすればいいのに』とか言うけれど、間違いなくこの人がチームのことを一番考えているよなって。

 それは西ヶ谷だけじゃなくて、どの監督もそう。だから一層、監督が試合中にどんなメッセージを送っているのか、どんな想いを抱えているのか、伝えられれば、と思うんです」

【次ページ】 ピッチリポートは職人技なのだ。

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