野ボール横丁BACK NUMBER
代打で6打数6安打、父は元プロ。
横浜高・度会隆輝の「おまじない」。
posted2018/08/09 16:20
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Kyodo News
成就率100%の「おまじない」だ。
「自分ならできるって、気の済むまで言い聞かせてます」
横浜の1年生で、「代打の切り札」である度会隆輝(わたらいりゅうき)は試合後、笑顔を絶やさずそう振り返った。中学時代、U15日本代表の3番を任されていたスーパー1年生でもある。
度会は7回表が終わったところで監督から「(代打の)準備をしておけ」と言われた。素振りをしているとき、ネクストバッターズサークルにいるとき、そして打席に入ってからも「自分ならできる」と呪文のように繰り返した。
「心の中で言ってるつもりなんですけど、声に出ちゃうときもある。代打を任されるようになってから、自然とやるようになってました。今日は全部で25回は言いました。これまででいちばん多かったかもしれません」
打席は9回表、ツーアウト走者なしの場面で巡って来た。初球をとらえた当たりは、ライト前へきれいに抜けた。
「ウキウキした気持ちで打席に入った。楽しめたから結果が出たんだと思います」
この夏、これで代打通算成績はなんと6打数6安打。10割である。
プロ選手の父にほめて伸ばされ。
じつは、度会の父親は、元ヤクルトの度会博文さんだ。度会は3歳のときに3歳上の兄と一緒に遊びで野球を始めた。博文さんは右打ちだったが、度会はそのときから左打ちだったという。
「その頃のことは、うっすらと覚えてます」
自宅に庭にネットで囲まれた打撃練習用のケージがあり、そこで博文さんにティーバッティングのボールを上げてもらいながら打撃の基礎を磨いた。博文さんの指導方針は基本的に「ほめて伸ばす」だったという。試合で結果を出すと必ず「ナイスバッティング!」と声をかけてくれた。それが嬉しくて、さらに練習に打ち込んだ。