“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
インターハイで見るべき逸材は……。
Jリーグでスター確定の「弟」たち。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/08/07 07:00
三國ケネディエブス(後列左端)擁する青森山田高校イレブン。全国大会の常連だが、チーム内競争の激しさも全国屈指。
中村俊輔の「10番」を1年生から。
「相当な能力を持っている選手。より厳しい場面で決定的な仕事ができるようにしたい」と桐光学園・鈴木勝大監督が語ったように、入学してからすぐ、かつて中村俊輔(現・ジュビロ磐田)らが背負ったナンバー10を託され、攻撃の中枢として据えられた。
1年生ながら大きな責任を背負い、兄から伝え聞いた通りの甘えを許さない厳しい練習環境の下、彼は着実に成長を遂げた。
2002年2月生まれの彼はU-16日本代表としてもプレー。今年は来年のU-17W杯出場を懸けたAFC U-16選手権もあり、大忙しの1年となりそうだ。
「今年はプロになるために必死でやりたいと考えていました。昨年はプリンスリーグ関東で1点しか獲れなかったし、選手権予選も勝てずに大会にも出られなかった。そういう面では悔しすぎる1年だった。今年は2年生ですが、すべてのレベルを上げて、チームを勝たせる選手になりたい」
「兄は越えないといけない存在」
入学当初は179cmの高さを持ちながらも華奢だった彼は、この1年半で胸板も厚くなり、フィジカルコンタクトにも屈しない強さを身に着けた。
もともとその突破力では抜きん出た存在だっただけに、そこにさらなる力強さが生まれたわけだ。
確実にやれることが増え、より左のアタッカーとしての怖さが増したことで、早くもその獲得を目指して本格的に乗り出しているクラブも複数ある。
「左サイドからどうやっていい形でゴール前にアプローチできるか、いい状態でシュートを打てるかが課題。もっともっと伸ばせる場所は多いと思います」
伸びシロ十分の彼を射止めるのはどのクラブか。熾烈な獲得のサバイバルレースはすでに始まっている。
真夏の三重を彩る「弟」たち。
彼らに共通しているのは、「兄は越えないといけない存在」(中村拓海)であり、「学ぶべきものが多い重要な存在」(三國ケネディエブス)であること。
先を走る兄の背中を見て、そして追いかけて育ち、やがてそれを追い越そうとする――兄達も弟達に負けじと努力する。家族だからこそ存在する絆が、彼らの成長速度を上げている。
インターハイはそれを証明する1つの舞台。少しでも成長した姿を見せるべく、3人はそれぞれのピッチに立つ。